タワマン節税の“規制強化”で守るべき4つのポイント

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■守るべき4つのポイント

相続税額の計算では、金融資産が時価とされる一方、土地は路線価、建物は固定資産税評価額が適用される。いずれも市場価格より低めに設定されているため、現金を持っているより不動産に換えたほうが相続税を安くできる。購入したマンションを賃貸物件として貸し出せば、税制上の評価額は一段と下がり、さらに賃貸物件用の土地については200平方メートルまで「小規模宅地等の特例」も適用され、一層の評価減を受けられる。

相続税評価額では路線価より固定資産税評価額のほうが時価との差が大きいため、戸建てよりマンション、中でも物件当たりの土地の持ち分の少ない、「タワーマンション」と呼ばれる高層マンションは相続税節税効果が高い。当社が運営するネット上の会員サービスのデータを集計すると、現金をマンションに換え、そのマンションを賃貸に出した場合の相続税評価額の評価減は、平均で約80%。市場価格と相続税評価額との差は都心ほど大きく、また高層マンションほど大きかった。

しかし「タワーマンション節税」という言葉が一般化したことで、規制強化の動きも出ている。2016年1月24日付の日本経済新聞によれば、総務省と国税庁において、現在は階によらず面積にのみ比例している固定資産税評価方式を市場の実勢に合わせて変更し、高層階ほど高額となるよう補正する案を検討中という。「高層マンションの20階は1階の10%増し、30階は同20%増し」という数字が例として挙げられた。

ただ、30階の物件の評価額が以前より20%高くなったとしても、もともと8割減額された残りの20%が24%になるにすぎない。そこに最高税率55%がかかったとしても、物件の実勢価格に対して2%の違いでしかない。この程度の違いでは、「現金で持っているよりマンションを買ったほうが、相続税の大幅な節税になる」という、タワーマンション節税の本質に影響はない。

相続税評価額の基本となる路線価は国土交通省が定める公示地価に依拠しており、固定資産税評価額は総務省の管轄だ。そこにかけられる各種の評価減についても、「土地の有効活用を促す」という政策的な見地から定められた経緯があり、国税庁が勝手に見直すことはできない。

過去にマンション購入が租税回避行為に当たるとして、税務調査で否認事項とされた(税務否認)ケースがいくつか知られている。具体的には、親が亡くなる直前、息子が親の代理でマンションを購入し、自分も住まず賃貸にも出さずに、親の死後すぐに売却した――という相続税回避の目的が明らかな、悪質なケースだ。

問題は、「一般的な不動産投資と租税回避行為の境界はどこにあるのか」という点にある。当社は、投資用不動産の購入が租税回避行為とみなされるリスクをなくすために、顧客へのコンサルティングの際、いくつかの自主的制限を設けている。

第1のポイントは、被相続人が元気でしっかりしているうちに購入すること。第2は、代理人や後見人ではなく、被相続人自らが取引すること。第3は、相続した不動産資産の売却は、相続税申告後まで行わないこと。第4は、相続や不動産に詳しい、優秀な税理士に相談すること。

こうした留意点を守っていれば、マンション購入後に相続が発生したとしても、純然たる不動産投資とみなされ、トラブルにはならないだろう。

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沖 有人
スタイルアクト代表取締役。慶應義塾大学卒。コンサルティング会社、不動産マーケティング会社を経て1998年から現職。著書『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』など。
 

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(構成=久保田正志)