3月11日、Jタウンネット編集部撮影

JR五反田駅の高架下のすし店「立喰ずし 都々井(たちくいずし つつい)」が2017年3月18日をもって閉店する。

Jタウンネット記者が11日昼、現地へ赴くと、店の立て看板には

「この度、大家(JR)からの突然の通告により、店舗契約が終了となり、今月、3月18日をもって閉店させていただく次第となりました」

という書き出しの貼り紙があった。

店内には「移転先、決ればお知せ致します」の案内が......

「立喰ずし 都々井」は、JR五反田駅の東口を出て正面右、3、40メートルほど歩いた場所にある。


線路では山手線の列車が走行していた


線路では山手線の列車が走行していた

記者が訪れたのは、土曜の昼下がり。13時15分頃だった。店の外では、約10人の老若男女が順番待ちをしていた。



ランチメニューの時間は、14時まで。にぎり(1人前)とちらしずし、鉄火丼がすべて650円(税込)で、にぎり(1.5人前)とちらしずし(特盛)、鉄火丼(特盛)は900円だった。



隣には通常メニューの看板があり、その下には店主と店員一同からの「告知と感謝」と題する貼り紙があった。

「現在もですが、今までもいろいろなお客様方に来店していただき、感謝思いしかありません。大した事も出来ませんでしたが、この店で楽しそうに過ごしている姿を見たり、『美味しかったです』などと声をかけていただいた事が、何よりも最高の思い出でした。足繁く当店に通っていただいたお客様、色々気をかけてくれた方々に対して本当に心苦しいのですが、この店を閉める事をお許し下さい。皆様方のこれからの多幸を心よりお祈りいたします。世界で最高のお客様に来ていただいた事が、何よりも一番の自慢です。本当に、本当にありがとうございました」


記者は15分ほど並んだ後、カウンター席の片隅に案内された。店内には、7、8人ほど収まりそうなカウンターが2列分。少し色あせた浮世絵画やお品書き、木材などが、この店の歴史を物語るようだ。記者がにぎりの1.5人前を注文すると、調理場の職人がカウンター越しにメモを取り、めがねをかけた初老の男性が接客担当なのか、「どうぞ」とお茶を差し出してくれた。





10分ほど待つと、職人からカウンター越しにすし桶が手渡された。すし11貫と巻物3巻。これで900円は、お手頃感がある。



まぐろ、いか、えび、たこ、サーモン......。どれもこれも味わい深いネタばかりだった。シャリの人肌とネタの温度の相性は抜群で、噛めば噛むほど、口の中に旨味が広がった。



「移転先、決ればお知せ致します。差し障え無ければ連絡先(名刺)下さい」

食後に一息つくと、カウンターのそんな案内板が目に留まった。「名刺」には名前や電話番号、メールアドレス、住所の記入欄があり、「記入頂ける箇所のみで結構です」と添えられている。

記者は迷わず手に取り、すべての項目を埋め、会計の際に初老の男性に「お願いします」と渡した。男性は「またご連絡させていただきます」と述べると、手の平サイズのアルミ缶を取り出し、丁寧に記者の「名刺」を仕舞い込んだ。缶の中にはびっしりと、数十枚の「名刺」が詰め込まれていた。記者は「また来ます」と述べ、店を後にした。

時間にして、14時ちょうど。店外では15人ほどの客が、未だに長蛇の列を形成していた。