市立川越vs駿台学園vs三郷北
メンディス 海(市立川越)
3月8日の対外試合解禁の声を聞いて、最初の土日。いよいよ高校野球のシーズンも、この週末から本格的に始まっていくことになる。埼玉県西部地区の強豪、市立川越には駿台学園と三郷北が集合した。市立川越は、昨夏はほとんど2年生が主体というメンバーながら、優勝候補の浦和学院を倒して注目された。そのメンバーがそのまま残った秋は期待が高かったが、県大会では早々に敗退。選手の意識過剰もあったという。そして、一冬越えたこの春、どんなチームに成長しているのか楽しみだった。
その中心となる存在のメンディス 海君は、新井 清司監督も、「下半身を含めて、身体は一回り大きくなった」と言うが、まだまだ投げ込み不足というところは否めないようだ。だから、この日も立ち上がりの1、2回よりも、むしろ3回以降の方が安定していた。必ずしもベストではないながらも、予定通りの6回を投げて、駿台学園打線を0に抑えた。最近マスターしたというチェンジアップも有効だった。こうした、タテ系の変化球をどのように効果的に使うことができるのかということも、今後のテーマの一つであろう。
さらには、昨春はむしろメンディス君以上の信頼感を得ていながら、夏前に故障で残念な思いをした、もう一人の左腕小川君も、8回に駿台学園の小田君に一発を浴びたものの、順調な仕上がりぶりを示していた。この、両左腕がしっかりそろってくると、やはり今年の市立川越も強いだろう。
駿台学園・安田投手
打線は、最も安定しているという3番を予定している星野君が前日の練習試合で守りの際に指を故障して守れないということもあって、この日は代打と3試合目にはDHで出場した。駿台学園戦では8回に一死満塁から2者を帰す左前打を放ち、三郷北との試合でも、淡々としたお互いがやや貧打気味の展開の中、5回の先制タイムリーを含めて2打数2安打。打撃の安定ぶりをアピールしていた。また、三郷北には矢内君と太賀君の二人で1安打完封。投手陣としては、さらに層が厚くなっていきそうなところを感じさせた。4月中旬からの春季大会地区ブロック予選へ向けて、まずは順調な仕上がりといったところだろうか。
これに対して、4月2日には早くも春季東京都大会の初戦を控えている駿台学園。今年早々の1月に開催された全日本高校バレーボール(通称春高バレー)では、男子バレーボール部が全国制覇を果たしている。野球部としても、もちろん、それも刺激にはなっているだろう。近年、東京都でも中堅以上の存在を示している存在だが、もう一つ勝負脆さがあることも否めない。エースとして予定していた新居君が、腰などの故障で投げられないというのもチームとしては痛い。
この日は、市立川越に対しては、期待の左腕安田君が、大きく足をあげるダイナミックな投球フォームから球を散らしながら工夫していたが、細かく点を取られてしまった。それでも、球そのものは悪いものではなかった。そして、もう一人の期待の右サイド伊藤 力哉君が、2試合ともリリーフとして出てきたが、途中で制球を乱して掴まってしまった。
ことに、三郷北との試合では、予定の4イニングを過ぎて、三角裕部長に「あと1回行かせてください」と直訴して、8回のマウンドにも登った。ところが、先頭打者にボテボテ気味の内野安打を許すと、バント失策などもあって、無死満塁。ここから、連続して死球を出してしまい押し出しで2点。駿台学園ベンチは、ここで急遽右翼手の四條君をリリーフに送る。本来ならば、この回の頭から行く予定だったのだが、外野から入ったことでいくらかリズムに乗りにくかったのか、一死は取ったものの、失策にバント安打、そして大出君に二塁打されてこれで決定的になった。投手キャリアがまだ浅いというが、それだけにこうした経験も大事な要素といえよう。
山田 球太(三郷北)
試合の流れとしては、先制されながらじわじわと追いつき逆転。これを逃げ切るという、シミュレーションとしては絶好の形だった。それが出来なかったことに対して、川口 将司監督は、「このチームは、負けるときというのは、いつもこうした形で、ビッグイニングを作られて、これでずるずるといってしまうんです。秋からの課題をまだ引きずっているという状況でした」と、残念がった。これから、半月間で、試合を重ねていきながら、そこの課題をもう一度修正していきたいところである。
現在、部員が15人という三郷北。同地区では野球経験のある中学生の多くが東京都の学校や、比較的近い越谷市に流れるということもあるようだ。「人数が少ないので、全員が投手メニューの練習をこなしています。それがいいのか悪いのか、わかりません。だけで、ウチのようなところは、誰もが、どこでもやれるようにしておかないといけませんからね。まぁ、女子マネージャーは7人もいるんですけれども…」と、伏見 徹監督は苦笑する。
しかし、この日の試合を見た限りでは、少人数の中で工夫しながら、いい形のチームのまとまりを見せているという印象だった。ことに、市立川越戦では、淡々とした展開だったが、山田君が好投。そして、7回から遊撃手の福田君と入れ替わっても、押し出しこそあったものの、試合は崩れなかった。4月になって、新入生が加わったら、チームとしては、さらに底上げされていきそうな期待感は十分にあった。
(取材・文=手束 仁)
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