斎藤佑樹と田中将大が戦った、それぞれの春のセンバツ・甲子園を振り返る

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 駒大苫小牧高は2004〜05年夏の甲子園大会を連覇した強豪校である。06年夏は決勝で早稲田実業に延長18回引き分け、翌日再試合の激闘の末に敗れ、1931〜33年の中京商(現中京大中京高)以来、史上2校目の夏3連覇を逃したが、高校野球が続く限り永遠にその名が語り継がれる強豪校である。この強かった駒大苫小牧高で05年春以降、主力投手として活躍したのが田中 将大(現ヤンキース<関連記事>)だ。

駒大苫小牧を先頭で引っ張った田中将大

田中 将大(駒大苫小牧時代)

◇2005年夏の甲子園大会3回戦・先発〇/日本航空高……7回3分の2、被安打9、奪三振12、与四死球3、自責1準々決勝・救援〇/鳴門工………6回3分の1、被安打4、奪三振12、与四死球1、自責3準決勝・先発/大阪桐蔭高……7回3分の1、被安打6、奪三振9、与四死球3、自責4決勝・救援〇/京都外大西高……4回3分の1、被安打4、奪三振5、与四死球2、自責0

◇2006年夏の甲子園大会2回戦・完投〇/南陽工……………9回、被安打7、奪三振14、与四死球6、自責33回戦・救援〇/青森山田高………6回3分の2、被安打6、奪三振5、与四死球2、自責3準々決勝・完投〇/東洋大姫路高…9回、被安打9、奪三振11、与四死球4、自責3準決勝・救援〇/智辯和歌山高……8回、被安打4、奪三振10、与四死球2、自責1決勝・救援/早稲田実業……………12回3分の2、被安打7、奪三振10、与四死球3、自責0決勝再試合・救援/早稲田実業……7回3分の1、被安打4、奪三振4、与四死球3、自責3

 以上は夏の大会の全成績で、通算すれば7勝0敗、防御率2.41。さらに詳しい内容は奪三振率10.58、与四死球率3.33である。選抜はどうだろう。

◇2005年春の甲子園大会1回戦・完投〇/戸畑高…………9回、被安打6、奪三振6、与四死球2、自責02回戦・救援/神戸国際大附……4回、被安打0、奪三振4、与四死球0、自責0

 1勝0敗、防御率0.00、奪三振率6.92、与四死球率1.38でわかるように夏を上回る安定感である。98年の甲子園のヒーロー、松坂 大輔(横浜高)の甲子園成績も紹介しよう。春、夏通算11試合に登板し、春は5試合中、完投2、完封3と群を抜いた安定感で、夏は6試合中、完投2、完封3とやはり一分のスキもない。通算成績は11試合に登板してリリーフした1試合以外はすべて9回を1人で投げ切り、11勝0敗、防御率1.00、奪三振率8.82、与四死球率2.64。これを見る限り、高校時代の安定感では松坂が田中を上回っていると言っていい。

 しかし、田中は夏の大会、先発した4試合のうち、途中降板が2つもある。香田 誉士史監督がチーム勝利に重点を置くあまり細切れの投手リレーを田中に強いて、甲子園での印象を散漫にしたと言えなくもない。逆に言えば完投を少なくすることにより登板過多による肩・ヒジの故障から田中を守ったとも言える。

超高校級のピッチングを見せた斎藤

斎藤 佑樹(早稲田実業時代)

 06年夏の大会で田中以上に注目されたのが“ハンカチ王子”の異名を取った早稲田実業のエース、斎藤 佑樹(日本ハム)だ。斎藤の06年夏の成績も紹介しよう。

1回戦・先発〇/鶴崎工…………………9回、被安打3、奪三振7、与四死球3、自責12回戦・完投〇/大阪桐蔭高……………9回、被安打6、奪三振12、与四死球1、自責23回戦・完投〇/福井商…………………9回、被安打10、奪三振7、与四死球3、自責0準々決勝・完投〇/日大山形高…………9回、被安打5、奪三振10、与四死球5、自責2準決勝・完投〇/鹿児島工………………9回、被安打3、奪三振13、与四死球0、自責0決勝・完投/駒大苫小牧高………………15回、被安打7、奪三振16、与四死球6、自責1決勝再試合・完投〇/駒大苫小牧高……9回、被安打6、奪三振13、与四死球0、自責3

 この大会の通算成績は6勝0敗、防御率1.17、奪三振率10.17、与四死球率2.35。すべての面で田中を上回っていることがわかる。プロ入り後の成績の伸び悩みから甲子園での活躍が正当に評価されていないが、甲子園大会でブームを巻き起こしたのは間違いなく斎藤の実力によるもの。

 夏の大会を中心にここまで2人のことを書いてきたが、選抜でも2人はその後の活躍を予感させるピッチングをしている。田中は前で紹介したように05年春2試合に登板し、1勝0敗、防御率0.00、奪三振率6.92、与四死球率1.38という夏を上回るピッチングをしている。戸畑戦はストレートが最速143キロを計測し、それよりよかったのが縦・横2種類のスライダー。プロではスプリットのキレでメジャーリーガーを翻弄しているが、高校時代の勝負球はスライダー。バント処理のフィールディングも一級品で、2回戦での敗退が不思議でならなかった。先発で起用していれば結果は変わっていたと思う。

 斎藤は06年の選抜に出場し、田中以上に記憶に残るピッチングをしている。

1回戦・完封〇/北海道栄高……9回、被安打4、奪三振8、与四死球3、自責02回戦・完投/関西高……………15回、被安打11、奪三振13、与四死球8、自責52回戦再試合・救援●/関西高…7回、被安打8、奪三振3、与四死球3、自責3

 2回戦の関西戦では延長15回引き分け、翌日の再試合の両方で投げているのが注目される。2日間の投球数は、夏の大会が296球、春の大会が334球という迫力。1人の投手が同じ年の春(選抜)と夏(選手権)に延長15回引き分け、翌日の再試合に投げたのは斎藤1人だけだろう。駒大苫小牧高との夏の再試合では最後の打者、田中 将大への4球目に147キロのストレートを投じている。投球フォームにも躍動感があり、このときの斎藤は間違いなく“超高校級”と形容してもよかった。

 (文=小関 順二)

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