地域に根付いて育まれてきた方言は、その土地の人々の感覚や歴史が詰まっている。そうした背景から生まれる細かなニュアンスは、他の地方の人々にも中々伝わらないものだ。

そんな方言の中でも「関西弁」を取り上げ、日常で使用頻度の高い言い回しを英語に翻訳した本が話題になっている。在庫切れが続出となるほどの人気を博しているこの1冊について、作者の川合亮平さんに取材し、こだわりや苦労を聞いてみた。


関西弁の多様性を英語で定義(以下画像はすべてKADOKAWA提供)

なるほど感を楽しんでほしい

作者の川合さんは、イギリスにも頻繁に取材へ赴くジャーナリストだ。様々なウェブサイトでイギリスに関する文章を書いており、イギリスのアーティストや俳優へのインタビューや通訳を手掛けている。

生まれも育ちも大阪市という川合さんが、生粋の関西人でありイギリス通というプロフィールを活かして作り上げ、話題を集めているのが『「なんでやねん」を英語で言えますか? 知らんとヤバいめっちゃ使う50のフレーズ』だ。


英訳からあるあるネタまで幅広く収録されている

関西弁を英語で解説した一冊で、例文を交えて微妙なニュアンスの違いや、関西の文化やあるあるネタをも英語を通して学ぶことが出来る。


必ずメロディーつきで音読してくれる

Jタウンネットの取材に対し、川合さんは、

「学びよりも笑いを意識して作りました。本を通して『なるほど感』を楽しんでほしいです」

と語った。執筆時には関西とイギリス、両方のお笑いを多めに見聞きし、コメディ要素を多く取り入れたという。

2015年には「きんいろモザイクと英語レッスン」を監修しており、その縁もあって、コメディタッチで英語を学ぶという共通のコンセプトを持つ今作にも関わることになってという。

「なんでやねん」の執筆においては、関西弁と英語、そして笑いと学びを両立させる必要があったため、様々な苦労もあったと語った。

その1つが、ツイッターでも話題を呼んだ「ええ」の活用である。

「関西人は無意識に使い分けているので、『ええ』の10種類の活用を挙げるのには苦労しました」

関西弁には「ええ」や「せや」を始め、多くの活用をする単語が数多くある。感覚で使い分ける身近な言葉を説明することは難しかったという。

また、短い会話文の中でも必ずオチを付けることにも苦心したという。「執筆中は関西とイギリスのお笑いを多めに取り入れた」ということもあり、そのこだわりは随所に表れている。


例文には必ずオチが用意されている

ツイッターでは本を紹介するツイートが数千回もRTされるなど話題を集めているが、そういったSNSでの反響については、想定外のことがあったとも語った。

「関西から人気が出ると予想していたんですが、他の地域から始まったのは、嬉しい誤算でした」

そうした関西以外の地域の読者からは「関西弁の勉強になる」という感想もあったという。

確かに、関西弁話者にしか基準が分からない様々な「ツッコミ」の言い回しの使い方が載っている4章などは、特に関西弁の勉強になると感じた。購入者は発音の音声データもダウンロード出来るため、イントネーションも確認可能だ。

関西とイギリスを知って見えた共通点

生粋の関西人でありつつ、イギリスにも造詣が深い川合さんは、2つの地域の共通点について、

「どちらも笑いを重視する文化があるというのが共通する部分ですね。イギリスの笑いは切れ味の鋭い皮肉も使う強い笑いで、関西の笑いにも通じるところがあります」

と語った。

また、現在は通販サイトでは売り切れとなっているが、年末年始には補充される予定だという。ただ、書店などには残っている可能性が高いという。