この東南アジアを拠点としている犯人グループのジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラディシュについては日本企業の人質が「日本人だ、撃たないでくれ」と叫んでも殺されてしまった事件として、過激派が日本人を特別とは見ておらず、攻撃のターゲットとなっていることが明らかになった象徴的な出来事だと思います。

 中東やヨーロッパを拠点とするイスラム過激派グループは、銀行強盗をしたり、石油プラントを強奪したり、支配地域から税金をとったりして活動資金には困っていません。そのため、新たに支持者として加わった戦闘員に給料を出すこともできる。

 それに対して、東南アジアを拠点とするグループはお金がないんです。活動資金を得るため、すぐお金が手に入る手段として身代金誘拐事件を起こすのではないかという懸念があります。

 ダッカの人質事件では、凄惨さや残虐性を示すための殺害が目的でした。彼らがなぜ残虐性をアピールするのかといえば、その後、自分達の要求を相手に飲ませることも一つの目的のためなんです。

 特に日本においては2020年に東京オリンピックが控えていますから、イスラム過激派にとっては自分達の存在を全世界にアピールする絶好の機会と捉えているはずです。日本や東南アジアにおいて日本人を狙ったテロの可能性は高まっています。日本企業もテロに備えておかなければなりません。 テロ対策だけでなく、海外に出ている日本人社員の方やご家族の方に、犯罪や事故などセキュリティ上の問題が起きた時のサポートも行っています。 また、医療が未発達の国では、病気やケガ、交通事故でも対処の仕方次第では命にかかわることもあり、すべてが完備されている日本の環境とはまったく違っています。事件や事故が起きたときはすぐに連絡していただき、適切に対処することがとにかく重要です。 事故を誘発しないためには、普段から防止するための準備が必要なんです。一つは、海外赴任や出張前の研修です。そこで、日本とはどういう部分が違うかを知っていただき、海外に行かれる方ご自身やご家族の意識を高めていただきます。 二つめは、お客様の会社がいざという時に対応できるような体制を作り上げること。 三つめは、お客様の会社のオフィスや工場といった海外拠点、駐在員住宅、駐在員の方がよく足を運ぶショッピングセンターやスポーツクラブ、通勤経路などのセキュリティのチェックを当社で行い、治安面で問題があれば報告して改善していただく。そういった多方面からの準備を行うことで、やっと海外での安全な活動や、もしもの時の対応ができるようになります。 当社では14地域の海外セキュリティ・コンサルタント会社と直接契約を結んでいます。そのため、クライアントがトラブルに遭った際も、最優先で現地に駆けつけられるようになっています。

 また当社は、ロンドンに拠点を置く世界最大のセキュリティ・コンサルティング組織のシニアコンサルタントを務めています。そのため、ハイジャックや海賊事件といった大きな事件では、グローバル・ネットワークによって随時情報を入手できるようになっています。有事の際の対応の早さには自信があります。

 私は警視庁で警察官として20年勤務をしていた間に、外務省に出向し、ニューヨークで領事を3年務めました。その時、FBI、CIA、ニューヨーク市警といった治安組織と情報交換する機会も多く、どんなシステムで治安維持を行っているかを目の当たりにして大変勉強になりました。 帰国後、1987年にエッソ石油に入社しましたが、当時の日本にはセキュリティ部門をもつ会社が無かったんです。エッソ石油を含むエクソングループは世界各国で事業を行っていて、その中で様々なセキュリティ上のトラブルを経験していました。 安全だと言われていた日本でもセキュリティの必要性があるということから、セキュリティ部門の立ち上げに関わることになりました。 このような警視庁、海外の治安組織との交流、民間企業のセキュリティ部門という、これまでの経験から培ってきたネットワークのすべてが現在の事業に役立っています。 まず最初は、危機管理に関するポリシーを作っていただくことです。その上で、セキュリティを担当する人材をアサインしてください。さらに、社員の方に対してセキュリティ面での研修を行っていただく。