56万本の動画・13億回の再生を分析することで見えてきた「動画尺×エンゲージメント率」の意外なカンケイ

写真拡大 (全5枚)

人々のアテンションスパン(集中力が持続する時間)が短くなっていると言われる現代。米国では、65万本のオンライン記事やブログを分析したところ、最後まで読む人は全体の20%しかいなかったそうです。同様の傾向が動画においても見られると考えてよいでしょう。

動画の強みのひとつは情報力の多さですが、“一定の時間をかけて”最後まで視聴されることで初めて、すべての情報が伝わるという性質があるため、アテンションスパンの短い人々の注意を引き続けることは、大きなチャレンジになっているのです。

そんな中、動画配信プラットフォームを提供する米Wistia社が非常に興味深いデータを公開しました。

下のグラフは、同社のプラットフォームを通して配信された56万4710本の動画と、それらに対して起こった13億回の動画再生の分析から得られた、動画尺とエンゲージメント(≒視聴維持率)の関係を表すものです。

このグラフからは何が読み取れるでしょうか? 詳しく見てみましょう。

2分以内であれば高いエンゲージメント率を期待できる

上のグラフの通り、0〜2分の間においては、エンゲージメント率を維持できることが分かります。

本記事の冒頭で、アテンションスパンが短くなっていることをお伝えしましたが、このグラフを見る限りでは、2分までであればエンゲージメント率の大きな落ち込みを心配しなくても良さそうです。

もちろん、不必要に動画を長くする必要はなく、動画をコンパクトにまとめられるのであれば、それに越したことはありません。しかし、例えば必要な情報を削ってまで、無理に30秒程度の短尺にまとめることに腐心する必要はないと言えるでしょう。

2分を過ぎるとエンゲージメント率が下がり始める

上述のように2分以内は安全圏ですが、2分を過ぎてから一気に下降線をたどっていきます。

動画の目的や内容によっては10分以上の長尺が必要なものもあります。それらを無理やり2分以内におさめるのは本末転倒ですが、例えば2分30秒程度の仕上がりになりそうな動画であれば、2分以内におさめられるか検討する価値はありそうです。

また、これから新しい動画コンテンツを企画制作するのであれば、コストをかけて長尺動画を制作するよりは、2分以内という範囲の中で企画すると良いかもしれません。

6〜12分は第二の“狙い目”

2分以降は下がり続けるエンゲージメント率ですが、6〜12分は50%付近でいったん落ち着きます。

つまり、7分であろうと、10分であろうと、エンゲージメント率に大きな影響はなさそうです。12分以内であればあまり尺を気にすることなく、視聴者にとって価値のある情報、伝えるべき情報をきちんと伝える動画を制作することに集中するべきだと言えるでしょう。

12分以上の長尺動画では「質」がより重要に

12分を超えると再びエンゲージメント率が下がり始めますが、その割合は比較的ゆるやかです。そして20分を過ぎてもこのまま同じように下がっていくことが想像できます。

12分を超えるような長尺動画は、例えばセミナー動画や、ドキュメンタリースタイルでユーザーを紹介する動画、専門家による深い解説を伴うチュートリアル動画などのコンテンツが想定されます。

これらは、視聴者も長尺であることを理解(あるいは期待)して視聴していると推測されるため、この先はいかに視聴者を引き付け、魅力的かつ価値ある動画になっているかが、エンゲージメント率を左右する要因になると考えられます。

movieTIMESの読者の皆さまであればよくご存じの通り、動画の目的や内容、あるいマーケティングファネルのステージによって、適切な動画尺は異なります。
また今回のデータは、ウェブサイトや自社メディアなどに掲載する動画が対象であり、YouTube内やソーシャルメディアで配信する場合は、また違ったロジックが成り立つでしょう。

今回ご紹介したデータは、ありとあらゆる尺・タイプ・目的の動画を含んだ65万本の分析結果であり、この考え方がすべての動画コンテンツに当てはまるわけではありませんので、ひとつの目安として今後の動画制作の参考にしてみてください。
どれだけ短尺動画の方が良いと言われても、あくまで、本来のマーケティング目的を達成することがもっとも重要です。