日本は不運もあったかもしれないが、結局ゴールを奪い切るための形がなかったんだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部

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 ロシアワールドカップ出場への道のりは、先行き不透明なスタートになってしまったね。本田のゴールで先制しながらの逆転負け。選手たちの立場からすれば、「いったい俺たちはなんで負けたんだ?」って思いなのかもしれない。実力的には決して負けて良い相手ではなかったからね。
 
 ただ、結局今回の最大の敗因は、このチームにはまだまだ「点を取るための形」がないということにあると思っている。確かにチャンスは作れている。クロスバーを叩いた惜しいシュートもあった。判定によって認められなかったゴールもあったかもしれない。それでも、勝たなきゃいけない相手に対して、こうして競り合いに持ち込まれて、まんまと1点差で逃げ切られてしまった。結局のところ、日本には決定打というものが出なかったんだよ。
 
 じゃあ、どうすればその決定打を生み出せるのか。そこを突き詰めていかないと、問題は解決しないわな。
 
 チャンスは作った。でも決まらない――。これは準々決勝で敗れた前回のアジアカップの時と一緒だ。要するに、日本の攻撃というのは攻めているように見えるだけで、実はあまり相手の脅威になっていないんじゃないかな。ゴールを奪い切るだけの迫力というか、はっきりとした形がないんだ。それがないから、相手も日本の攻撃に怖さを感じない。
 
 日本はボールを持っている時間は長いけど、漠然とゴールのほうへ向かっているなあという感じ。横へ横へという感じでパスをつないでいく。これじゃゴール前を固める相手は怖くない。
 
 例えば、トップにタイミング良く縦パスを当てて、落としたボールを20メートルくらいの距離から狙うとか、そうやって真ん中でDFを食いつかせてからサイドに展開するとか、あるいは2列目以降の選手がDFの背後に勢いよく飛び出して行くとか、とにかく相手が怖がることをやっていなかったように思うよ。
 
 逆にUAEだって、そんなに攻撃のバリエーションを持っているわけじゃないんだけど、彼らは本気でゴールに向かってくる。それが怖いわけでしょ。だからペナルティエリア付近の際どいところでユニホームを引っ張ったり、足を引っ掛けたりしてFKやPKを与えてしまうんだ。やっているのは個の能力を生かした非常にシンプルなことなんだけど、狙いがはっきりしているから日本の攻撃より余程怖さがあったよ。
 
 それから、この試合でなにかとクローズアップされている主審の判定だけど、そりゃあ「おかしいな」という判定があったとしても、人間が裁くものだからしょうがない。そこに感情を持っていかれて冷静さを失ったらダメだ。そもそも、審判どうこうの問題の前に完璧に相手を叩きのめすサッカーをしていれば問題はなかった。
 
 今回の相手にしたって、2か月も一緒に練習をやってきたというわりに、チームとしてはあの程度だからね。日本は全員揃ったのが2日程度で、準備期間がもう少しあればもっとできることがあったかもしれないが、やっぱり負けていい相手じゃない。
 
 ただし、UAEもチームとしてはさほど強くないとはいえ、選手個々の強さがあったのは確かだ。中東や南米、あるいはアフリカのチームに多い特長で、そういうチームに対して日本のDFはなかなか守り切れていない。
 
 リオ五輪でもナイジェリアの選手に個の力で守備を破られてしまった。やっぱり日本の選手は個の力ではどうしても劣ってしまう。だから、個の勝負に持ち込ませない、組織で戦うという思考になりがちだけど、結局のところ、そうした勝負を完全に避けることはできない。今回も改めて日本の弱点を露呈したようにも感じる。日本も個で戦える力をつけていってほしいね。
 
 それから、今まで初戦で負けたチームが予選を突破したことがないって? そんなことはまったく気にする必要がないよ。これから勝って勝って、勝ちまくればいいだけの話。そうすれば、誰もそんなデータの話はしなくなる。
 
 それよりもゴールを奪うための形だよ。いつまでも相手の周りをぐるぐる回すだけのサッカーは見たくない。次のタイ戦では、もっと相手に怖さを与える攻撃で、しっかりゴールを奪って勝ち切ってほしい。