大好評をいただいた「海外旅行で腹を下さないための予防策、医師がコッソリ教えます」に続き、今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、下痢になりやすい「世界3大高リスク地域」を大公開。さらに、高級ホテルと普通のホテルで比べた「食中毒の危険度」の違いなど、これから海外旅行に行く人が知っておきたい情報が満載です。

世界3大渡航下痢地域

旅行者の約半数は下痢を経験します。下痢は1日に3回以上の軟便または水様便をきたすことです。たいていは軽く済みますが、時には重症化したり、2週間以上続いたりすることもあります。旅行中の下痢はせっかくの旅行のプランを台無しにして、楽しかったはずの旅行が苦しかった経験となってしまうこともありますので、下痢をきたさないように予防に努めることは重要です。

海外旅行中の下痢では、「世界3大高リスク地域」というのがあります。南または東南アジア、中央アメリカ、そして北および西アフリカです。また、ビジネス目的よりレジャー目的、そしてクルーズ旅行(豪華客船の旅)の場合にも下痢のリスクが高まります。クルーズ旅行では、ノロウイルスなどのグルメ系貝類摂取の下痢のアウトブレイクがときどきみられます。貝類以外には、サラダや生肉の摂取で下痢の危険性が高まります。

ホテルの星数と下痢のリスク

旅行のガイドブックにはよくホテルの星数が記載されています。5つ星ホテルは高級ホテルで、3つ星は中級などのようにランク付けされています。たしかに5つ星ホテルの部屋は綺麗でサービスはよいという印象はありますが、これまでの研究では、ホテルの星数にかかわらず、貝類、サラダ、そして生肉などの高リスクメニュー摂取では下痢が起こる頻度は変わらないという結果がでています。ホテルにかかわらず、世界3大高リスク地域では、高リスクメニューを避けたほうがよいでしょう。

その他の下痢のリスクが高くなる要因には、乳幼児、制酸剤内服中、胃の摘出手術の既往、などがあります。H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬などの強力な制酸剤内服や胃の摘出では、胃酸の分泌が無くなるために胃酸による殺菌作用がなくなるので下痢になりやすくなります。

また、血液型がO型の人は赤痢やコレラに罹りやすいということが知られています。わたしもO型ですので、旅行中の食事メニューには常に注意しています。欧米の都市部のホテル宿泊料金はかなり高めになっていますので、学会などでそこの滞在する場合には、5つ星ホテルではなく、3つ星から4つ星ホテルにしていますが、やはり高リスクメニューには常に気を付けています。

渡航者下痢症の原因

下痢の原因の多くは細菌性とウイルス性です。軽症患者の場合には、便培養検査などが行われないことが多く、そのまま治癒して、原因は特定されないことが多いです。2週間以上持続する(慢性)下痢では、寄生虫によるものが増えてきます。

また、メキシコでかかる慢性下痢で最近注目されているのはシクロスポラという寄生虫(原虫)です。メキシコの有名リゾート地であるカンクーンなどに行くときでも高リスクメニューには注意しましょう。インドやタイ、パキスタンへの渡航で多い下痢の原因はカンピロバクターという細菌です。

文献

Barrett J, Brown M. Travellers’ diarrhoea. BMJ. 2016 Apr 19;353:i1937.

image by: Jamesbox / Shutterstock.com

 

『ドクター徳田安春の最新健康医学』

世界最新の健康医学情報について、総合診療医師ドクター徳田安春がわかりやすく解説します。生活習慣病を予防するために健康生活スタイルを実行したい方や病気を克服したいという方へおすすめします。

<<登録はこちら>>

出典元:まぐまぐニュース!