県立岐阜商vsいなべ総合
県岐阜商・村橋投手
今春にセンバツ出場を果たし、敗れたとはいえ準優勝した高松商と接戦を演じて力のあるところを示したいなべ総合。春季県大会も、尾崎英也監督は「センバツから帰ってきて、下手な試合もしていられない」と言うように、3試合連続2ケタ得点で、決勝も完封勝利と圧倒的な強さを示してきた。今大会も優勝候補の筆頭と言っていい存在だろう。
県立岐阜商は、昨秋も東海大会に進出したが、準々決勝で敗退してセンバツ出場を逃した。県内ではこのところ、大垣日大と2強を形成しているという印象が強いが、1年生も入ってきて部員も124人に膨れて大所帯となっている。創立112年目を迎える県を代表する伝統校でもある。ベンチでスコアをつける記録員の生徒が伝統の白線帽をかぶっているのも県立岐阜商の特徴だ。
三重県と岐阜県の1位校同士の対決となったが、いなべ総合は昨日、日大三島を1イニングで粉砕しての進出。県立岐阜商は、愛知産大三河に9回サヨナラ勝ちしての進出である。好試合が期待されたが、思わぬ展開になってしまい、県立岐阜商が投打に充実ぶりを発揮した。
2回に県立岐阜商は二死走者なしから7番村橋君が内野手の送球ミスで出塁。続く8番柳君も中前へはじき返して繋ぐ。さらに、纐纈(こうけつ)君も左前打で満塁とした。そして1番に返ると山賀君が右前打で二人が還って、県立岐阜商が先制。
さらに、二、三塁という場面で広瀬君も右前打でこの回3点となった。二死走者なしから、ちょっと詰まり気味だったが、浅い内野ゴロの送球がそれたことから大事になってしまった。野球は一つのプレーで流れが傾いていくということを如実に表したような現象になっていった。
いなべ総合・赤木投手
流れを掴んだ県立岐阜商は5回、先頭打者の4番松田君が右翼へソロ本塁打して追加点を挙げるのだが、さらに深尾君、時田君、代打林君と、柳君の4連打で1点を追加。6回にも野選と時田君のタイムリーなどでさらに2点をリード。まさかの7点差がついてしまった。
しかし、さすがにいなべ総合もこのままでは終わらなかった。いや、尾崎監督としても、このままでは終われないというところだったであろう。7回に、ここでも相手の送球ミスからいなべ総合の反撃が始まった。
失策の走者を置いて、6番に途中から入っている清水君も安打して一、三塁。ここで、県立岐阜商は5回からリリーフのマウンドに立っていた下手投げの野中君を諦めて、3人目として岩井 英寿君を投入。しかし、暴投と代打瀧本君の安打でいなべ総合は2点を返す。なおも、四球を挟んで内野安打でこの回3点を返した。8回からいなべ総合は力のある実質エースともいえる渡辺 啓五君を投入して2イニングを抑えて、8、9回の反撃を待ったが、県立岐阜商も4人目の岡本君が2イニングを抑えた。
終わってみればいなべ総合は5人、県立岐阜商は4人の投手を起用して、両チームで9人の投手がマウンドに登ったことになった。それだけ投手がいるということでもあるが、高校野球としては珍しいケースでもあろう。また野手も含めて両チームで34人が起用された。とはいえ、県立岐阜商の小川信和監督は、「今日は継投で、4人を使うということは、最初から考えていました。その継投イニングもほぼイメージ通りでした」と、4人を使ったことも、当初のイメージ通りだったようだ。村橋君は、連投となったが、これも夏を見据えて、ある程度連投に耐えられるかということのため市もあったようだ。また、「この大会では、どこかで使いたかった」と思っていた野中君に関しては、2イニングと途中での交代となったが、イメージ通りには投げてくれたと満足をしていた。「開催県の代表として、決勝まで進めてよかった」と、岐阜県1位校としての責任もまずは果たしたという安堵もあったようだ。
また、二死からの得点に関しては、「二死からでも繋いで得点していかれるようにしようということはいつも言っているのですが、それを実践してくれたことはよかったと思います」と、連打が出ていい形での得点が出来たことを小川監督は素直に喜んでいた。
(文=手束 仁)