履正社vs大阪桐蔭
3年ぶりの優勝を果たした履正社
履正社は1回表、二死から3番・四川 雄翔(3年)が四球で出塁。続く4番・安田 尚憲(2年)が放った高い打球を大阪桐蔭の外野手が目測を見誤り、一塁走者の四川が先制のホームを踏んだ。2回には9番ピッチャーの山口裕次郎(3年)が自らのピッチングを楽にするタイムリーを放ちゲームを優位に進めた。
山口は初回を三者凡退に打ち取って並に乗ると、大阪桐蔭打線を5安打1失点に抑えて完投。3季連続で敗れていた最大のライバルに快勝し、3年ぶり5回目の春季大会優勝を果たした。
「山口のピッチングにはビックリしました。真っすぐがきていましたね。しんどい場面もあったが、彼にとっても試練だと思い、キャッチャーの井町大生(3年)も大丈夫と言うので最後まで行かせました」と背番号18を讃えた岡田龍生監督。
準決勝のレポートではあえて書かなかったが、実は試合後に準決勝と決勝をエース・寺島 成輝(3年)と山口の二人に託すと決めていたことを明かしていた。山口本人も、「金曜日に岡田先生から、土曜日は寺島、日曜日は僕が先発と言われました」と話す。準決勝で寺島に貫録のピッチングを見せられ、大いに刺激を受けた。しかも前日の5月14日が誕生日で、この決勝は18歳になって初めてのマウンド。「色んな人からおめでとうと言われました」と気分を良くしていた。
ピッチングの中でポイントになったのが初回。準決勝で寺島が三者三振をとっていたが、それに負けじと三者凡退。エースとは違い全て打たせて取ったのが山口らしさでもある。2回には自らのバットでタイムリー。これには「たまたまです」と笑う。その後も、腰痛で春先に投げられなかったとは思えないほどの投球内容で大阪桐蔭打線を封じ、復帰してから初めての9回完投を果たした。
夏に向けてはさらにピッチングの引き出しを増やすべく新たな球に取り組んでいる。勝利の瞬間はキャッチャーの井町と抱擁し、「夏も優勝して(マウンドで」抱き合いたい」と寺島を横目に見ながら話した山口。近畿大会でも登板機会があれば楽しみである。
チームとしては、岡田監督から「春を勝たないと夏はない」と課されていた目標を一つクリアした。次は近畿大会で各府県の強豪と対戦する。ゲーム主将を務める四川は「優勝したい」と縁起の良い和歌山で近畿の頂点に立つ決意を語った。
一方、敗れた大阪桐蔭の西谷浩一監督は、先発した今大会のエース・徳山 壮磨(2年)を「良く投げた」と評価したが、「守りのミスが出て徳山をカバーできなかった。力不足です」と一言、一言を噛みしめるように話した。
徳山と、このゲームでもリリーフした香川 麗爾、ファーストの福井 章吾といった2年生が台頭した今大会だったが、3年生にケガが相次いで何人かがベンチを外れた。「1、2年生に使いたい選手がいる」とさらにチーム内の競争は激しくなる。6月には沖縄(11日、12日)と香川(18、19日)の招待試合に招かれ、背番号をつける機会が多い。夏をにらんでどんなメンバーを構成してくるか。大阪桐蔭の招待試合にも注目だ。
(写真:071〜112=中谷 明)
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