アフリカのチームについて矢島は「身体能力があって足も長いし、ボールを持った時に“伸びてくる”独特な感覚があると思う」と対人の強さに警戒を強める。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「メンバーに入るために必死で、常に危機感を持っていますよ」
 
 リオ五輪本大会のメンバー入りを懸けたサバイバルにおいて、矢島慎也は自らの立ち位置をそう語る。チーム内でも指折りの技術とユーティリティ性を誇り、手倉森監督の“秘蔵っ子”と呼ばれる彼とて、「最終予選で優勝したメンバーだからと言って、残れる保証はどこにもない」とアピールの場に飢えているのだ。その意味で、トゥーロン国際大会前のガーナ戦は、願ってもないチャンスである。
 
 U-19日本代表時代、南アフリカ遠征でケニア、カメルーン、南アフリカと対戦した経験がある矢島は、「最近はあまりアフリカのチームとやっていないので……今はどうか分からないですけど」と前置きしつつ、当時の記憶を紐解きながらガーナ戦のイメージを語った。
 
「アフリカのチームは規律を持って守備をやる感じではなかったです。でも、対人に強いイメージはありますね。身体能力があって足も長いし、日本人とのリーチの違いというか、ボールを持った時に“伸びてくる”独特な感覚があると思うので、上手くスペースを見つけて動ければいいかなと」
 
 世界と対峙する際、「身体能力の差に直面する場面がある」と矢島は睨む。だからこそ、常に動き、運動量で相手を上回ることは不可欠になるだろう。
 
 4月の静岡合宿ではボランチを務めたが、前日練習では4-4-2の左サイドハーフに入った。同ポジションは、これまで10番を背負ってきた中島翔哉の主戦場。今回故障で不在のため、矢島にはその“代役”として攻撃を牽引してほしいという指揮官なりのメッセージが込められているのではないか。岡山でボランチとしてプレーすることで、守備面に磨きをかけつつも、ゴールへの意欲は忘れてはいない。
 
「チーム状況によりますけど、どんな試合でも点を取りたいです。そこで違いが出てくるのかなと思うし。岡山では最終ラインに近い場所でプレーしているので、守備のポジショニングとかは試合に出続けることで課題に気づけました。“上積み”と言うなら守備の部分だと思いますけど、パスをつなぐ、前に出て行く、点を取る、アシストをすることもずっとやってきている。チームと代表、場所は変わっても自分がやるべきことは変わらないと思います」

【九州・熊本震災復興支援チャリティーマッチ@ガーナ戦 U23日本代表練習】
 
 手倉森監督の下、コンスタントに代表に招集され、かつて「あまり意識していなかった」五輪は、1年前から「目標」になったという。サッカーに限ったことではないが、人は明確な目標ができればモチベーションが高まり、達成に向けて努力するもの。今の矢島はまさに、自身が設定した目標に向かって全力疾走を続けている状態だろう。
 
「組み合わせも発表されて、(大会が)近づいてきているなと感じるし、五輪があるからこそ、そこに向けて今、目一杯頑張れています。絶対に出たい大会ですね」
 
 ガーナ戦終了後に、矢島の前には新たな景色が広がっているのだろうか。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)