浦和学院vs上尾
上尾の前に立ちはだかった浦和学院のエース・榊原翼
浦和学院vs上尾という埼玉の私立、公立を引っ張る存在である両チームの激突となった準決勝、この対決で思い出されるのは、2012年秋ベスト8、小島 和哉投手を擁し、後にセンバツ大会初優勝を飾ることとなる浦和学院に対し、上尾が小島を攻略するなど9回で4点をリードしながら、最終回浦和学院が大逆転で勝利した試合であろう。さらに、浦和学院・森士、上尾・高野和樹と上尾高校野球部OB同士の対決という因縁も相まってか、今回もその意地と意地がぶつかりあい試合は白熱した展開となる。
浦和学院が榊原 翼、上尾が山下と両エースが先発し試合が始まる。まずは、初回上尾がペースを握る。
1回裏、榊原の立ち上がりを攻め、先頭の土屋がセンター前ヒットで出塁すると、続くバントの構えの亘理に対し、上尾ベンチはバスターを選択する。これが見事に当たり、レフト前ヒットを放ち無死一、二塁とチャンスを広げる。3番山口がきっちりと送り一死二、三塁とすると、続く増田が四球を選び一死満塁と好投手榊原に対し、上尾は絶好のチャンスを掴む。ここで、5番・大橋のショートゴロ併殺崩れの間にまず1点、さらに続く瀬田がレフト前タイムリーを放ち2点目を奪うと、さらに、6番・萩原が死球で出塁し再び満塁とするが後続が打ち取られ2点で攻撃を終了する。
対する浦和学院の反撃は3回表、一死から、この日9番の杉山がレフト越えの二塁打を放ちチャンスメイクすると、ここから山本、家盛、諏訪の三連打で1点を返し、尚、一死満塁とする。ここでこの日4番に入った幸喜がレフトへきっちりと犠飛を放ちすぐに2対2の同点とする。
上尾は、3回裏にもチャンスを掴む。この回先頭の増田が四球で出塁すると、続く大橋がきっちりと送り一死二塁とする。ここで先程タイムリーを放った6番・瀬田がここでも期待に応えセンター前ヒットを放つと、二走・増田が本塁へ突入するが、センター山本の好返球で刺され勝ち越しのチャンスを逸する。
その後は、2回以降落ち着きを取り戻した浦和学院・榊原がMAX142Km、アベレージでも130km後半の直球を武器に上尾打線を抑え込めば、直球はアベレージ120km後半ながらも投球モーションに入って、特に足を上げてからが早い投球フォームに特徴がある上尾・山下も浦和学院打線を打ち取る。中盤は、その両投手が踏ん張りを見せ試合は終盤戦へ進む。
まずは7回表、浦和学院はこの回先頭の榊原がレフト前ヒットで出塁すると、続く杉山がきっちりと送り一死二塁のチャンスを掴む。 ここで、浦和学院打線が4巡目を迎えた所で上尾ベンチは、山下から渡部へとスイッチする。渡部は山下と似通った体形ながら、山下とは対照的にゆったりとしたフォームからMAX140km越え(この日のMAX142、アベレージで130km後半)の直球を投げ込む投手なのだが、その渡部が代わり端ややバタつく。
1番・山本にレフト前ヒットを浴び一死一、三塁とされると、ここから家盛、諏訪に連続四球を与え1点を勝ち越され、さらに一死満塁で4番・幸喜を迎える。ここで開き直ったか、幸喜を三振で切り抜けると、後続を打ち取り何とか1点で凌ぐ。
この試合初めてリードを許した上尾もその裏、すぐに反撃を開始する。この回先頭の市瀬がレフト前ヒットで出塁すると、続く渡部の所で一塁牽制が悪送球となり無死二塁とする。ここで、渡部が送れる雰囲気がないと見るや、上尾ベンチはがまたしてもバスターを選択する。これが見事に当たり無死一、三塁とチャンスが広がる。だが、ここは榊原が踏ん張り一死後、亘理のショートゴロ併殺崩れによる1点のみで切り抜け、試合は3対3同点で最終回を迎える。
9回表、浦和学院は、先頭の山本がセカンド強襲ヒットで出塁すると、続く家盛はバントの構えを見せる。ここで、渡部はやや色気を出しインコースの直球を投じるが、これが死球となり無死一、二塁と傷口を広げてしまう。3番・諏訪がきっちりと送り一死二、三塁とし、再びピンチで4番・幸喜を迎える。幸喜はファーストゴロに対し、三走・山本は本塁へ突入する。間に合わないと見るや山本は途中で止まり、三本間で挟まれる。キャッチャー市瀬は三塁へ追い込むまでは良かったが、三塁への送球が悪送球となり浦和学院にラッキーな勝ち越し点が入る。さらに、二死後、1年生の蛭間に対し、直球で追い込むと、打ち取れると見たバッテリーは直球を続ける。だが、蛭間はその直球をきっちりと弾き返すと、これがレフト前への2点タイムリーとなり浦和学院が9回表、3点を勝ち越す。
これで、勝負あったか榊原がその裏の上尾の反撃を無失点で抑え浦和学院が上尾を6対3で下し関東大会へ駒を進めた。 まずは、浦和学院だが、エース榊原が3失点完投勝利とまずまずの投球を見せ、今大気これまでやや消化不良気味だった打線も、この日12安打とここへ来てやや上向いてきた。だが、守備はこの日3失策とやや乱れた。この当たりが、関東大会や夏への課題か。だが、内野陣は昨秋からセカンド、ショート、サードがシャッフルされており、その連携面はまだまだ発展途上といった所か。 一方の上尾だが、この日浦和学院を突き放すチャンスが何度もありながら、ちょっとした所の差で関東大会への切符を自ら逃した形となってしまった。とはいえ、ここまでの勝ち上がりは見事であった。一冬越え打線は力強さを増し、この日も直球が武器の榊原に対し振り負けなかった。投手陣も山下、渡部、阿部と三枚を揃えているだけに夏の大会も乗り切れるであろう。今大会の結果により、夏はマークされる存在となりそうだが、あとは細かい所の修正をすればその道は自ずと開けてくるではなかろうか。(文=南 英博)
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