台湾の馬英九総統は28日、軍用機に登場してスプラトリー諸島(南沙諸島)で中華民国として実効支配する太平島に上陸した。馬総統は次期総統に決まっている民進党の蔡英文主席(党首)を「一緒に海を見に行きましょう」と誘い、断られたという。(イメージ写真提供:123RF)

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 台湾馬英九総統は28日、軍用機に登場してスプラトリー諸島(南沙諸島)で中華民国として実効支配する太平島に上陸した。馬総統は次期総統に決まっている民進党の蔡英文主席(党首)を「一緒に海を見に行きましょう」と誘い、断られたという。

 台湾メディアの東森新聞雲によると、民進党の楊家祐広報担当は27日に出演したテレビ番組で、馬総統の蔡主席に対する“誘い文句”について「みなさん、聞いたら絶対に頭がくらくらしますよ。(馬総統は蔡主席に)『一緒に海を見に行きましょう』と誘ったんですよ」と述べた。

 一同が驚いた。「本当なのか?」との声も出た。続けて司会が楊広報担当に「その話を証明できますか?」と尋ねると、楊広報担当は「本当ですとも」、「自分の話には責任を持ちます」と断言した。

 台湾では、総統の権力が極めて大きい。出演者からは、現職総統が次期総統に対して、しかも領土問題で多くの国が対立している南沙諸島の島への上陸問題と言う、政治的に極めて重い決断が必要な行動についての「軽い声掛け」に疑問の声が出た。出演者からは「海を見に行こう、夕日を見よう、おしゃべりをして、ご飯を食べようと、女の子を誘うのと同じ」との声もでた。

 「蔡英文主席なら、そんな言い方を聞いただけでも、行くのがいやになる」との指摘も出た。

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◆解説◆
 上記の最後の部分の主張には、非常に興味深い点がある。まず、相手によっては互いの地位にもとらわれず、厳粛なことを敢えて軽く話すことが効果的な場合もあるだろうが、蔡主席がそういう性格の人物とは思えないことだ。

 蔡主席は学者肌で、極めて細かいことにも完璧を期す性格とされる。演説でも、その場の雰囲気を盛り上げようとするのでなく、自分の信念をひとつひとつ説いていくタイプだ。そんな蔡主席に、「あえて軽く言った」としても逆効果になる公算が大だ。

 つまり馬総統は「相手の考え方」や「その場の空気」が読めないということになる。考えてみれば、2014年3月に発生した「ひまわり学生運動」も、馬英九総統が台湾人、特に若い世代の間で強まっていた対中関係のあり方についての不満や不安を読み切れなかったことが原因だったと言ってよい。

 今回の馬英九総統の太平島上陸について、中国政府・国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は「中国が南シナ海の島について争う余地のない主権を有することを示すために、太平島を訪れた。(台湾海峡の)両岸は1つの中国であり、両岸の同胞は共同で国家の主権と領土の完全性を維持する責任がある」と、事実上の「歓迎」の意向を示した。

 米国政府関係者は、事前に上陸は取りやめるよう申し入れていたと述べた。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)