2016年の日本経済は電力小売りとマイナンバー関連企業が伸びる!
「爆買い」や「インバウンド」が流行語になった2015年を総括。そして今年はどんな一年になるのか? ビジネスリサーチ・ジャパン代表の鎌田正文氏に予想してもらった。
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昨年末に発表された新語・流行語大賞では「爆買い」や「インバウンド」がノミネートされた(爆買いは年間大賞を受賞)が、昨年好調だったのは、その流れに乗った企業だった。
「特に目立ったのは東京・秋葉原を拠点に展開している免税店『ラオックス』ではないでしょうか。それまでは正直言って、いつ倒産してもおかしくない企業でしたが、昨年は営業利益率が10%を超えました。つまり、売り上げ100円当たり10円以上の儲けが出ているということです。普通、家電量販店の営業利益率は1、2%がいいところですから、これは驚くべき数字。ラオックスほどではありませんが、やはり外国人観光客が多かった『ドン・キホーテ』や『ABCマート』も好調でした」
さらに外国人観光客は、意外なところにも好景気をもたらしているという。
「新宿ゴールデン街にたくさんの外国人観光客が訪れているのです」
新宿ゴールデン街とは、東京・新宿の歌舞伎町にある飲み屋街のこと。作家や映画監督、ミュージシャンなどの文化系の常連客が集い、一見さんお断りな雰囲気の漂う個性的な飲み屋が連なっているため、日本人でも立ち入るのに少々勇気のいるエリアだ。
しかし最近は、外国人観光客の増加とともにウエルカムな雰囲気に変わりつつあるらしい。試しに平日の昼間にのぞいてみると、確かに英語で「クレジットカード使えます」の張り紙を入り口のドアに貼っている店が数軒あった。
「あとは一昨年からの円安の恩恵を受けた企業が伸びました。自動車メーカーなどがその代表ですね。決して輸出が伸びているわけではありませんが、単純に1ドル100円だったものが130円になるわけですから、決算上、伸びたことになるわけです」
では、今年はどんな動きが予想されるのだろう。鎌田氏はズバリ「業界再編の年」だとにらむ。
「ポイントは4月1日からスタートする、電力小売りの全面自由化です。すでに東京電力と中部電力が火力発電事業の共同化を進めていますし、東京ガスなども電力事業に参入しますが、それ以外にもネット通信会社や石油会社を巻き込んでの大きな再編が進みそうな予感です。
今、北海道電力から沖縄電力まで全10社の電気事業者の売り上げ高は約20兆円ありますが、それを奪い合うことになるわけですから、これは大きな動きになるはずです」
そして、すでに始まっているマイナンバー制度に関連する企業も伸びるだろうという。
「例えば、セキュリティ関連です。企業は社員からマイナンバーを集め、管理することになりますが、もしそれが流出してしまえば大問題になります。その意味でもニーズは高まるでしょう。そして20年の東京五輪に向けて、スポーツ、ゼネコン、不動産関連など多くの企業の業績が上向いていくはずです」
しかし不安要素もある。
「来年4月には消費税が10%に上がりますから、日本経済は大打撃を受けるはず。そのショックを少しでもやわらげるために、今年一年の動きは大事になりますね」
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(取材・文/井出尚志、渡辺雅史、高山恵、小島將裕[リーゼント])