大阪桐蔭vs滋賀学園

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大阪桐蔭が12年ぶりに秋の近畿制覇

滋賀学園先発の神村 月光

 試合開始早々、滋賀学園の応援スタンドは活気付いていた。連投のエース・神村 月光(1年)が立ち上がりを無失点に抑えると、打線は徳留 魁斗(2年)、後藤 克基(1年)のヒットでチャンスを作り相手のエラーで1点を先制。

 滋賀学園のチアは近隣の小中学生も一緒に活動しており全体で約50人。臨時の、ではなく普段から活動するチアリーディング部があるのは滋賀県で唯一。そんな華やかな声援を受けた滋賀学園打線は毎回のように安打を放ち、守備面では外野は常に後ろに下がり、普通の守備位置なら長打確実と思える大飛球を何度もフェンス手前でつかんだ。

 しかし5回、大阪桐蔭の5番・古寺 宏輝(2年)が放った打球は深めに守っていた西村 大樹(2年)でもグラブに当てるのが精一杯のセンターオーバーのスリーベース。神村がこの日許した初めてのヒットから同点を許すと、6回には併殺打で切り抜けたものの3番・吉澤 一翔(2年)にレフト前ヒットを打たれ一死一、三塁のピンチを背負う。

 8回終了時点での安打数は滋賀学園が10本で大阪桐蔭が2本。数字上では圧倒しながらスコアは1-1と突き放せずにいると、鋭いスイングと大きな当たりでプレッシャーをかけていた大阪桐蔭打線が9回に目を覚ます。

 先頭の永廣 知紀(2年)が2ボールからしっかり叩いてレフト前ヒットで出塁すると3番・吉澤の初球にエンドラン。滋賀学園の捕手・後藤が「入り大事にと言われてるんですけど甘く入ってしまって」と悔やんだカーブをうまく捉え右中間を破る。スタートを切っていた永廣は快足を飛ばし長駆生還。わずか4球で鮮やかに、大阪桐蔭が待望の2点目を挙げた。

 さらに二塁に到達した吉澤を4番・三井 健右(2年)が送りバントで三塁に進めると5番・古寺が飛距離十分の犠牲フライを放つ。一塁手としても何度も難しいバウンドの送球を捕球し守備でも大きくチームに貢献していたが、5回に続いてバットでもきっちり仕事を果たした。

 チーム全体で8回までわずか2安打。しかしその2安打を放っていた吉澤と古寺がキーとなりついに勝ち越しに成功。しっかりバントを決めた三井が「チーム一丸となって一球一球に入り込んでプレーするのが桐蔭の野球」というようにここ一番で集中力を発揮しついに試合をひっくり返した。

近畿大会で優勝を決めた大阪桐蔭の集合写真 

 それでも9回裏、練習の半分以上を打撃練習に充てているという滋賀学園打線が意地を見せる。四死球と後藤のヒットで一死満塁。滋賀学園の山口 達也監督は二走・武井 琉之(1年)に代えて代走・下河内 景太(2年)を送り反撃の準備を整えた。リードはわずかで二塁には同点となる代走のランナーがいる、1本のヒットも許されないこの場面でも大阪桐蔭の捕手・栗林 佑磨(2年)は滋賀学園の上位打線に対して真っ向勝負を貫いた。

「高山(優希)の気持ちを見れば。打たれてたのは変化球でしたし、高山が自信あるのもストレートなので。信頼してストレートを要求し続けました」左腕エース・高山 優希(2年)が9回に投じた35球の内訳は左打者にスライダーを2球投げただけでそれ以外の33球は全てストレート。渾身のストレートを投げ込んだ時、投げ終わった後の高山は帽子を飛ばすことが多い。

 球数が150球を超えることなる9回、「チームメイトが点取ってくれたんで自分がしっかり抑えて優勝しよう」と気合いを入れてマウンドに上がった高山の帽子は何度も飛んだ。

 滋賀学園の2番・井川 翔(2年)に犠牲フライを打たれ1点差に迫られるが、二死一、二塁から後藤もやはりストレートを6球続けて空振り三振。「配球が単調になって2点取られたんで、打って取り返したかったんですけど悔しいです」という後藤とは対照的に「ボール気味でしたけど、高山の気持ちが勝った」とウイニングボールをつかんだ栗林はミットを通じてエースの気迫を感じ取っていた。

 王者のイメージが強い大阪桐蔭だが秋の近畿優勝は意外にも2003年以来12年ぶり。前回の神宮大会では当時1年生だった平田 良介(現中日)を擁する強力打線が準決勝で36得点を挙げ大会新記録を作った。この記録は現在でも破られていないが決勝では延長10回の末、愛工大名電に敗れている。

 歴代の中でも屈指の実力を誇った当時のチームを超えられるか。今年の神宮大会ではまず関東代表とぶつかる。

「秋は毎試合勉強。このままでは全国では勝てないと思います。しっかり勉強していきたいと思います」西谷浩一監督がこう話せば、決勝タイムリーを放ったキャプテンの吉澤も優勝については「素直に嬉しかった」としながらも「まだまだ課題あるので勉強したい」と続く。出場を確実にしている選抜でも優勝候補となることは間違いない大阪桐蔭が神宮の舞台でも”勉強”してもう一段階強くなる。

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