「キャラ弁」は「自慢弁当」!? 専門家が指摘する、さまざまな問題とは
ネット上のキャラ弁って凄いですよね。
昔は幼稚園に通う他のママ友が作ったお弁当を見る機会はありませんでしたけれど、最近はSNSの登場によりちょっと事情が異なります。
ブログやフェイスブックなどのネット上には、芸術作品と見誤るような手の込んだキャラ弁がアップされています。
自分の知り合いでもなんでもない赤の他人なのにも関わらず、料理人級の腕を持つママのキャラ弁写真がシェアされていると、料理が苦手な人は「私はいいママじゃない…」と思い詰め、焦ることもあるでしょう。
しかし!この“キャラ弁”、本当に子どものためになっているのでしょうか?
『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話ししたいと思います。
そのキャラ弁、本当に美味しいの?
子どもが食べるキャラ弁、実際、ママが試食したことはありますか?
見栄えがよくするために様々な食材を使います。でも、味的にはどうなんでしょうか?
(大人が食べた感想)
・熊さんの口をピンクにするために白飯に桜でんぶを使用。でも、寿司飯ではないのでなんだか合わない。
・白いご飯の兎さん。耳をかたどるためにスライスチーズを使用。米とチーズなんだか合わない。
・デザインのためカニカマやハムが原型を留めず、ご飯にムニュッと押し込んである。 (持ち歩いている間に崩れないように押し込む必要がある)別々に食べたい。
・ミックスベジタブルがまざったボール型のおにぎり、食べてみるとボロボロこぼれる。
・梅干しおにぎり、おかかおにぎり、塩昆布おにぎりを食べたいな…
さて、食べてみるとなんだか口の中はまるで嵐。
オーケストラの中に三味線や和太鼓の音が混ざっているようなごった煮状態。
白いご飯に明太子、おかか、海苔、鮭、白いご飯にドーンと真ん中に梅干の“日の丸弁当”の方が美味しくありませんか?子どもの味覚だって同じです。
開けた瞬間は感動! でも…
確かにキャラ弁は蓋を開けるときは楽しみです。空けた瞬間の見た目のインパクトはかなり大きいです。
「わあ、アンパンマンだ〜!」「くまのプーさんだあ〜!」と感動があります。観賞用としては素敵です。
でも、箸をつけた瞬間、数秒のうちにバラバラになり混ぜこぜ弁当。合わない素材が使われていて、味的には?となることもあります。
また、毎日キャラ弁ですと、感動も段々薄くなっていきます。
キャラ弁によって幼稚園でできてしまうハードル
保育園の子は給食です。
自分の好みに関係なくみんな同じものを与えられて育っています。
キャラ弁体験が出来たとしても年に数回に遠足や運動会だけだったりします。
行事のイベントのお弁当としてキャラ弁もたまにはいいでしょう。 けれども幼稚園で毎日お弁当の場合は、数年後の学校給食のことを頭に入れなくてはなりません。
どうしてかと言うと…
学校給食はドドーンと“小松菜の煮びたし”“煮っ転がし”“焼き魚”など地味なものが出るからです。
キャラクターを型どったご飯が出てくることはありません。ご飯も白いまんまでフリカケが付いてくる訳ではありません。
毎日の夕飯も子どもの好物だけだったり、ニンジンが嫌いだからと細かく刻んでハンバーグに混ぜたり、ちくわの中にほうれん草を隠して入れたりしているとどうなるでしょう?
ドドーンと人参、ほうれん草など素材そのものが出てくる学校給食で子どもはとても苦労します。
食べやすいようにと親から丁寧に対応してもらい過ぎて育った結果、給食が苦痛にならないように、時にはあまりいじくらないで嫌いな物でもそのまんま入れることも必要ですよ。
そういった意味でも、毎日、子どもが喜ぶキャラ弁は徐々に減らしていった方が賢明です。
親子関係の障害になっている可能性も
キャラ弁がうまく作れる人は基本手先が器用なママです。
手芸の小物作りやビーズなども好きなのではないでしょうか。
でも、普段から料理が苦手、しかも細かい作業があまり得意でない人がこれをやったらどうなるでしょう。「みんなキャラ弁だから、うちの子にも凄いもの作らないと可哀想」と自らに高いハードルを課したら、きっと凄い形相で弁当作りをすることになるでしょう。
キャラ弁を持たせてやれないことよりも、眉間に皺を寄せて早朝から台所で鋏やピンセット使って苦手な工作している怖いママの姿を見せていることの方が、子どもにはよっぽど悲しいです。
更に子どもがこれだけ苦労した弁当を残してきたら「あんなに苦労して汗水たらして早起きして作ったのに」とカチンときてしまい、帰ってきた途端、「どうして残してくるの!」と余計な一言も言いたくなってしまいます。
これでは本末転倒ですよね。
苦手なことを無理してやることはありません。
キャラ弁ごときで親子関係が悪くならないようにしましょうね。
注意! 食中毒の危険にも配慮を
手先を使って細かい作業をすればするほど、菌が入る危険があります。
ある幼稚園でキャラ弁自慢大会になっているのを危惧した園長先生が「“食中毒の季節なのでくれぐれも手先を使って細かい作業は、清潔にお願いします”とお手紙を配布した」と聞いたことがあります。
“見た目は綺麗なキャラ弁。しかし、菌に侵され食中毒”なんてニュースになったらシャレになりませんからね。
“自慢弁当”があおるママの競争意識
早起きしてキャラ弁作り。台所には、ハサミや穴あけパンチやピンセットといった本来、調理以外に使う道具に溢れています。
ママは“芸術的作品”を完成させ、アングルを考えてパシャパシャと写真撮影。SNSに投稿します。
それを見た別のママ、「ああ、あんなにスゴいの作ってんだ」と焦りまくり「キッチリ作っていない自分」を責めたりします。
SNSへの投稿写真ってある意味、“幸せ自慢”です。
キャラ弁のため朝食が菓子パンとヨーグルト1個だけだったとしてもそれはアップしません。
お出かけ自慢も同じです。お出かけ写真を投稿しても、まさか夫婦仲が悪いことや姑との不仲をアップする人はいないでしょう。それと同じです。
だから、素晴らしいお弁当を目にしても焦ったり、自己嫌悪に陥ったり、競争意識を持つことはありませんよ。
最後に
付け焼き刃で作るキャラ弁は、実は単なる親の“自己満足”に過ぎないのかもしれません。
1日3回の食事の1回分、大事なランチ。
蓋を開けた瞬間のインパクトよりも、最後までおいしく食べられるお弁当のほうが良いのではないでしょうか。
それから、ものすごく労力をかけてキャラ弁を作ることだけが愛情表現ではありません。
昨晩の残りおかずを詰めたり、冷凍食品を頼って時間短縮したり。そこで捻出された時間で子どもと遊んだり、絵本を沢山、読んでやったりするほうがよいこともありますよ。