三重vs栄徳

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三重が総勢16人、投手延べ5人で延長の末振り切る

栄徳の先発・温水君は

 愛知県大会の三位決定戦で中京大中京に競り勝って、1992(平成4)年に創部以来、初めて秋季東海地区大会に進出を果たした栄徳。昨夏に愛知大会決勝進出を果たすなど、一つずつ階段を上がっていっているとも言えようか。

 しかし、昨年夏の甲子園準優勝校の三重の前に、いきなり全国レベルの洗礼を浴びた。右下手投げのゆっくりとした球で、制球力が持ち味の温水君だったが、その立ち上がりにやや球が集まりすぎたところを強力な三重打線につかまった。

 初回の三重は、先頭北出 敦也君が中前打で出ると、バントが野選となり一二塁。その後バントで送り二三塁とすると、岩崎君の中前打、川島君の右中間二塁打と左打者がことごとく温水君を攻略して、たちまち3点。さらに、7番藤田 朋樹君もタイムリー打を放って初回に4点が入った。

 それでも、栄徳も2回に7番近藤 将人君の左翼への3ランが飛び出して、1点差に迫った。これで、試合そのものも落ち着いてきた。温水君も、2回以降は落ち着いて自分の投球を取り戻していた。ゆっくりとしたタイミングを外す下手投げが功を奏してきた。

 こうして味方の反撃を待っていたのだが、栄徳は6回、四球の岩田君を一塁に置いて、近藤 颯真君が二塁打して、中継が乱れる間に岩田君は長駆ホームインしてついに同点に追いついた。試合は、追い上げて同点として勢いがついた栄徳の流れになっていったかと思われた。

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リリーフした三重・山岡君

 しかし、三重も2番手山岡君から、左腕堀内君をワンポイントの継投で起用して、再び山岡君を戻すという継投で8回の失策の走者をしのぎ、9回も無死一塁、一死二塁という場面をこらえて延長へ流れ込んだ。9回の一死二塁で栄徳は、9番温水君という打順で、ここが勝負のポイントかとも思われた。中野 幸治監督は試合後、「あそこで代打で、一気に勝負をという考えもありました。しかし、代打が必ずしも打てるとは限りませんし、その後のことを考えて消極的になってしまいましたね。結局、次の回に取られてしまったんですが…」と悔いた。

 10回の三重は、一死から途中出場の高坂君が中前打して出ると、二死となるも、7番藤田 朋樹君が中前打して一三塁。8番に入っていたリリーフした山岡君がしぶとく食い下がって、右前打して、これが決勝打となった。栄徳の温水君は、決して甘い球ではなかったのだが、そこは山岡君の気持ちが優ったということだろう。

 栄徳としては、同点とした後の無死二塁、さらに9回の無死一塁、一死二塁という場面があったが、結局あと一本が出なかった。「あそこで代打を出せる勇気がなかったんですね。やはり、点にならなかったときに、次の投手に対しての不安もありましたから」と、その心境を語っていた。

 近年、確実に上位に顔を出す存在となってきている栄徳。あと一つの壁をどう破るのか、このあたりも次のステップへの課題でもあろうが、中野監督は「やはり、投手は二枚きちんと育てておかないと…」と、温水君に続くタイプの異なるもう一枚、二枚と投手の成長に冬の課題を挙げていた。

 三重の中村 好治監督は、「投手を4人使って、こういう形で勝てたのは大きい。こういう試合を勝って行かれればうちは強くなれます」と、初回のリードを追いつかれながらも延長で、粘り切れたという苦しい試合をものにして、確かな感触を得ていたようだ。

(文=手束 仁)

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