初回の2点を死守した足立学園が何とか逃げ切り

変則気味のサイドハンド左腕の杉本 将司君(足立学園)

 初回に足立学園が、錦城学園の須藤君の立ち上がりを攻めて2点を奪う。結局、これが両チームを通じて唯一の得点イニングということになって、どちらにとっても想定外の展開になったようだった。

 初回の足立学園は先頭の落合君が初球を叩いていきなり左越二塁打するところから始まる。しっかりとバントで送ると、3番高山君は四球となり一三塁。ここで笈川君が中前打して足立学園は先制する。滝本君はさんざんファウルで粘ったものの倒れたが、6番中塚君が中前打して二塁走者を迎え入れた。足立学園の各打者は、「打てなくても何とかしていこう」という姿勢が感じられ、打席でもよく粘っていた。その結果の2点と言ってもいいのではないだろうか。

 このリードで、変則気味のサイドハンド左腕の杉本 将司君は、持ち味を出すことができた。決してスピードがあるというワケではないが、巧みにチェンジアップを駆使してカーブとスライダーと、自分の持ち球を十分に駆使して巧みに相手打線を打たせていった。

 気がついたら5回までは無安打に抑え、6回に初安打こそ許したものの、三塁へ走者を進めさせたのも8回のみ。そこも、4番の目黒君を中飛に打ち取っている。「今日は、持ち味が出ました。入ってきた時から、あんな投げ方なんですけれども、変則で球が遅いものですからタイミングを合わせにくいのでしょう」と、鈴木 龍監督は言っていたが、まさに錦城学園打線を術中にはめた見事な投球だった。

 4安打散発で無得点に終わった錦城学園。玉木 信雄監督は、「決して打てないチームではないと思っていたのですけれどもね。バッテリーを含めて、旧チームから出ている選手も多いし、ある程度はいけるというつもりだったんですけれども、外のチェンジアップに完全にやられてしまいました。追い込まれるまでは、狙って行ってもいいという指示でしたが…」と残念がった。そして、「学校も応援してくださっていて、今日も多くの応援が来てくれたんですけれども…。何とか一つ壁を越えていきたいです」と、秋季都大会は初進出だったが、さらに上のステップを目指すべく、再度チャレンジしていく意識を強くしていた。

 北千住にある学校からバスで30分ほどのところの三郷市に借り物ながらグラウンドがあるという足立学園。しかし、土日は使用不可なので、基本的には遠征試合で経験を積んでいっているというが、就任12年目となる鈴木監督がじっくりと育ててきたチームは、確実にチームスタイルも定着してきた。「決して野球優先という形ではありませんので、選手たちもほとんどが地元の出身の子です。そんな私学ですけれども、それでもなんとかやれるんだということを示していきたいです」と、指揮官の思いは熱い。それに応えるように選手たちはひたむきにプレーしていた。

 この日は、鈴木監督も「気持ちが攻めていたので、守りでも好プレーが出たのではないでしょうか」と言うように、ゴロの処理や難しい打球も好判断で処理し無失策。きっちりした野球が根付いてきているという印象だった。

(文=手束 仁)

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