ネットにあふれる犬・猫コンテンツ、「かわいい」と騒がれる陰で殺処分される犬猫は年間約13万頭

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野良ネコにエサを与えたら居着いてしまった。そんな経験をした方は少なくないだろう。筆者もその一人。ネット上の犬・猫コンテンツも大好物だ。しかし、やはり軽率な行動は慎んだ方がいい。それは昨年の夏だった。居着いてしまったネコに教えてもらったことを、ご報告する。

●子猫がマンションのベランダに迷い込んだ
この猫を保護したのは、昨年の8月だった。マンション1階の我が家のベランダに、茶と色の痩せた子猫が迷い込んだので、ついエサをやったら、居着いてしまった。ペット禁止のマンションなので困った。


こいつが迷い込んだのは去年の夏のことだった……


仕方なく、ネットの掲示板で里親募集の書き込みをしたら、遠方の女性からメールが届いた。「保護ネコを預かって里親を探すボランティア活動をしています。もしも、里親が見つからない場合は、ご協力できるかもしれません」と書かれてあった。

その後も、掲示板で里親募集を見たという3名の方から連絡があった。しかし、マンションの一人暮らしで日中は部屋にいなかったり、「庭で飼えます」とちょっとピントがずれていたりと、いまひとつ安心して預けられる印象がなかった。連絡くれるだけでもありがたかったのだが。

また、ネットで調べていると、犬・猫の里親募集に応募して、研究用の施設などに売りさばくケースもあるらしいと知り、「マジかよ」とかなり慎重にもなった。

けっきょく、最初に連絡をいただいた女性に預けることになった。「ウチも預かって」と殺到しかねないので場所は書けないが、けっこう遠方だったので、移動用のゲージを購入し、家内と二人で1日かけて電車に乗って預けにいった。

なお、連れて行く前は、女性の指示にしたがってワクチン接種をした。オスだったが、まだ子猫だったので去勢はできなかった。預けるときは、少しでも足しになればと思って数万円をお渡しした。「飼えねーよ、ごめん」という後ろめたさばかりが残った。

●ボランティアで猫を保護して里親を探している方には頭が下がる
その後は、その女性とは特に連絡をとることはなかったが、先日、預けた子猫の里親が見つかったことがわかった。特に連絡を受けたわけではないが、あるルートで確認できた。里親を見つけるのに5ヶ月以上かかったことになる。

じつは、預けたネコは脚をゲガしていて、完治するかどうか、かなり不安な状態だった。5ヶ月の間には、里親のトライアルも行われたようだが、脚のケガを気にして里親を断った人もいるようだ。その間、その方はずっと子ネコの世話をしてくれた。もちろん、保護ネコは1匹だけじゃない。

完全なボランティアだ。本当に感謝している。頭が下がるとしか、いいようがない。全国には、こういう方が他にもたくさんいるんだろう。本当に、頭が下がる。すみません。

●殺処分をゼロにする高校生の取り組み
環境省自然環境局のデータによれば、2013年度の全国の犬・猫の殺処分数は次のとおりだ(括弧内は幼齢個体)。

・犬……28,570(4,373)
・猫……99,671(59,712)

また、殺処分数の推移は次のようになっている。これを見ると、かつての犬・猫の殺処分数は、いまとは桁違いに多かったことがわかる。また、殺処分の対象は、圧倒的に犬の方が多かったようだ(現在は猫の方が多い)。


全国の犬・猫の殺処分数の推移(環境省自然環境局のページより)


昔に比べたら数は減ったとはいえ、現在でも年間で13万近い犬・猫が殺処分されているわけだ。

先日、NHKのあさいちを見ていたらネコの特集をしていた。そこで犬・猫の殺処分についてのコーナーがあり、殺処分された犬・猫の骨を引き取り、細かく砕いて土に混ぜ、それを使って花を育て、人々に配っている高校生が紹介されていた。三本木農業高校の「命の花プロジェクト」というらしい。殺処分された犬・猫の骨がゴミとして捨てられていることを知り、思いついたらしい。

やるな高校生、すごいじゃないか。現在の10倍もの犬・猫を殺処分していた昭和の時代、露ほども問題意識のない高校生であった自分など、足下にも及ばない。

今の自分には、犬や猫を飼う資格がないと思っている。せめて、こういう記事を書くことくらいしかできない。個人的には、免許制にしたらよいと思う。自分に飼う資格があると思ったら、ぜひ、飼ってみたいが、ペットショップで買うことは、まずないだろう。

全国の犬・猫の殺処分数の推移
三本木農業高校「命の花プロジェクト」


井上健語(フリーランスライター)