「えっ・・・、なに、これ?」

 4年前から日本でIT関連の仕事をしているインド人のSさん(29)。
 最近キャリアアップのために転職を考え始め、在留資格などの手続きについて調べていた。法務省入国管理局のウェブサイトを見て、外国人に関する情報を受け付けるページがあることを知って驚いた。

 ページをよく読んでみると「不法滞在者と思われる外国人」に関する情報を収集している。「適法に滞在している外国人に対する誹謗中傷は固くお断りします」とも書かれていた。

 在留資格に問題のないSさんは、「不法滞在者」ではない。しかし、一抹の不安を覚えた。不法滞在者ではなくても、そう「思われる」ことはあるのではないか、と。

 Sさんは日本でアパート探しに苦労したという。外国人と見るなり「部屋は貸せない」といわれたことが何度もあるからだ。日本の企業と一緒に仕事をし、正規のビザも持っているにもかかわらず、外見だけで拒絶された。

 「自分は悪いことをしていない。それなのに、なぜ?」

 Sさんは日本での生活にはすっかり慣れた。日本人の友人と家族ぐるみの付き合いもしており、日本を第二の故郷だと思うようにもなった。しかし、「外国人に部屋は貸せない」などといわれると、ふだん日本人の優しさを実感しているだけに、急に冷や水をかけられたような気がするし、とても辛いという。

 入国管理局は外国人労働者が増えた80年代末から、「ルールを守って国際化」をスローガンに、不法就労の外国人対策を強化している。不法滞在者の「情報受付」をインターネット上で開始したのも、その対策の一環だ。

 入国管理法というルールを遵守させることは、入国管理局の大切な仕事の一つだ。しかし、違反者を見つけるために、ルールを守っている人にまで何らかの形で危害が及ぶとすれば、その手段に問題がないといえるだろうか。

 不法滞在者の「情報受付」ページは昨年2月16日にオープンした。同ページに問題があると主張するNGOなどは、これを「メール通報制度」と呼び、法務省と入国管理局に中止を要請している。

 「情報受付」ページの何が問題視されているのか、今までの入国管理局のやり方と何がどう違うのか、4回シリーズで検証する。【了】

ライブドア・ニュース 佐谷恭記者


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