開設時の記入フォーム(画像提供:移住連)  リリース当初、通報動機の選択肢中の「近所迷惑」「不安」など入国管理局の業務には直接関係のない文言が問題となり、その後選択肢すべてが削除されている。

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 入国管理局の不法滞在外国人の「情報受付」ページを見て、不安を抱く人たちがいる。インド人ビジネスマンのSさんのように、漠然とした不安を抱く人から、「密告社会の始まりだ!」と声を荒げる人までさまざまだ。

 「情報受付」ページができて3日後の昨年2月19日、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」は、他団体と連名で同ページの中止を求める声明を発表した。また、同ページを疑問視する諸団体の連帯組織である「ストップ!メール通報連絡会」(連絡会)を立ち上げ、協力体制を作った。翌月17日に法務省に中止を求めるまでの1カ月足らずの間に231団体と756名の賛同を集めた。

 積極的なアピールや国会議員を交えた学習会、ロビー活動により、衆参両院の複数の委員会で問題提起されるなど、「情報受付」ページへの関心は高まった。その結果、3月17日、22日、29日の3回にわたり、ページの内容が変更された。議員やメディアからの批判が集中した差別的な表現や入管業務に関係のない通報動機などが削除された。

 「区別できないのに、区別を求めること。それが差別につながる」

 アムネスティ・インターナショナル日本の川上園子さんは、問題点をこう表現した。日本人か外国人かで別の対応を取ろうとすることと、見た目で判断できないはずの合法性・非合法性を通報させる仕組みを作ること、その2点が大きな問題だ。

 日本人でないと思われた人は誰でも、そのページを通じて通報される可能性がある。また、怪しいと思われてプライバシーに関わる部分まで詮索される可能性も否定できない。

 「従来から電話やファクスで受け付けていた情報を、インターネットでも受け付けるようにしただけ」

 不安や危惧の声があることに対し、入国管理局の岡部昌一郎広報係長はこう答えた。時代の流れと利便性を考慮した結果、インターネット上に「情報受付」ページを作ったということだ。

 しかし、連絡会はページ内の入力フォームの存在を疑問視する。「メール通報制度」が始まる以前は、通報連絡先が公開されていただけだった。ところが、現在の「情報受付」ページは通報動機や対象者の国籍・名前、職業などを順に埋めていく形式になっている。

 岡部係長は「入力項目は電話などで聞くことと、調査を開始する前に必要な情報を並べただけ」だと言う。しかし、フォームには「その気のない人にも通報する意識を芽生えさせ」、提示された項目は「不明な点の詮索を促す」ので、現在ある「情報受付」ページは差別を助長する可能性があると連絡会は考える。

 連絡会はこうした指摘をもとに、この「情報受付」ページは政府による外国人への差別行為となっており、人種差別撤廃条約に抵触していると主張している。それに対して入国管理局は、日本人と外国人を合理的に区別しているが、排外主義を煽るつもりはなく、差別または誹謗中傷を含む情報に対しては慎重に対処していると回答している。【了】


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