25日、日興コーディアルグループ本社で謝罪する有村社長(右)と金子会長(撮影:吉川忠行)

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証券大手の日興コーディアルグループは25日、2005年3月期に不正な会計処理をしていたとされる問題で、同社の金子昌資会長(67)と有村純一社長(57)が引責辞任すると発表した。有村氏の後任には、取締役の桑島正治氏(51)が就任する。人事はいずれも26日付け。また、同社は、数名が会計処理に関与したとして、これまで否定し続けてきた組織的な関与を初めて認めた。

 有村社長と金子会長は25日午後、東京都中央区の同本社で開いた記者会見で陳謝。有村社長は「証券会社のトップとして、経営責任を果たさざるを得ないと判断した。グループ全体を正常な機能に戻すことが重要だ」と辞任の理由を説明し、株主や市場の信頼回復を最優先したと述べた。

 不正会計については、「数名が一連の不適切な処理に関わった」と組織ぐるみだったことを認めたものの、経営陣の関与や利益水増しの意図については否定した。課徴金5億円の行政処分については、会計問題に関する金融庁からの通知書の内容をすべて認め、支払いに応じる答弁書を提出したことを明らかにした。

 日興は今後、弁護士など外部の専門家で構成する特別調査委員会を設け、利益水増しの意図があったかどうかも含め調査を進め、原因究明と再発防止に取り組む方針。また、問題の会計処理を適正と認めていた旧中央青山監査法人(現みすず監査法人)については、「訂正の監査証明をお願いし、議論を進めている」(有村社長)と述べるにとどめた。

 同問題を巡っては、証券取引等監視委員会が18日、◆05年3月期の有価証券報告書で実質的な支配にある孫会社を連結から外した◆子会社が所有していた孫会社発行の社債について虚偽の記載をした――として課徴金5億円の納付命令を出すよう金融庁に勧告を行っていた。これを受けて日興は、有価証券報告書などの訂正を発表。平野博文取締役の辞任や、有村社長、金子会長の減給処分を発表していた。

 有村社長は、日興コーディアル証券社長も退任し、後任には同証券副社長の北林幹生氏(53)が昇格する。

 2時間にわたった会見で、記者席からは経営責任や企業のあり方を問う厳しい質問が有村社長に相次いだ。有村社長は、時折笑顔を交えながら質問に答えていたが、事態の大きさの割には緊張感がないと指摘されると、表情が急変。金子会長が「顔では笑っているが心では泣いている。眉間にしわ寄せて真剣にやってるじゃないか」と釈明した。有村社長は悔しさとも怒りともとれない表情で報道陣にも聞こえるような大きなため息をつき、握りしめたこぶしを机に叩きつける場面もあった。【了】