農水省は「各種報道に対する農林水産省の考え方」というコーナーを持っている

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   官公庁がマスコミ報道に抗議したことを、自身のホームページで報告する。誤りがあった場合、マスコミに謝罪文を書かせ、その写真をホームページで「晒す」、といった例が増えている。これまでは抗議する場合も、公にはせず、直接マスコミと話し合うケースがほとんどだった。ここにきて役所側がインターネットを武器に、攻勢をかけている。

   外務省は、ホームページに2006年からマスコミへの抗議を掲載する「外務省関連報道に対する見解」のコーナーを設けた。

マスコミに送った抗議文と返答文書を掲載

   06年2月27日に出した「週刊現代」に対する抗議文では、文中に同誌編集人の実名も載せている。「外務省飯村豊大使の疑惑−『巨額津波支援金が消えた!』」という記事に対する抗議文には「まったくの事実誤認であるのみならず(中略)を意図的に歪曲して伝えるものです。さらに同記事は、根拠もなく…」と続き、7箇所の間違いを指摘し解説。
   「上記の外務省からの抗議に対しては、5月に当該報道関係者より表現に不十分な箇所があったことにつき遺憾の意の表明がありました」と「週刊現代」からの謝罪があったことも記している。

   また、06年10月14日にテレビ朝日が放送した「ドスペ」にも抗議。「中堅外交官の華麗なる厚遇ライフ」は事実無根とし、謝罪を求めた。テレビ朝日は06年10月27日に謝罪文を編成製作局長の名前で出した。「謝罪が出た」ことを同省のHPトップのヘッドラインで紹介。しかも、その謝罪文の写真を撮り「外務省関連報道に対する見解」コーナーで取り上げた。

   農林水産省もHPに「各種報道に対する農林水産省の考え方」というページを持っている。ここでもマスコミに送った抗議文といっしょに、マスコミから送られてきた返答文書を写真で撮影し掲載する、といったやり方をとっている。

「重点外交政策の一つ」と外務省

   習志野市の場合は、市役所のホームページのトップに「テレビ朝日の報道に対する抗議について」を表示している。06年10月6日放送の「スーパーモーニング」で市長選での票の『すりかえ』に対する抗議だ。クリックすると、テレビ朝日の社長宛に「貴社に対し猛省を促し、謝罪および訂正の報道を求めるものです」とした抗議文に飛ぶ。

   外務省はこうした抗議文や謝罪文の掲載についてJ-CASTニュースの取材に、

「国内外に対する説明責任を意識したもので、間違いや誤解があるものについては厳重に対応していきます。重点外交政策の一つに位置付けています」

と話す。
   一方、農林水産省は、

「昔は、発表といえば新聞、テレビなどのメディアを使っていましたが、情報提供の仕方も変わって、ネットを使えば効率的に(発表)できるようになりました」

とし、間違いや誤解の報道を早く広く知ってもらうのに役立てていると説明した。

   ある有名週刊誌の編集長はJ-CASTニュースに、

「ある種の見せしめ効果を狙っているのではないか。昔の役人は抗議の電話をしてきたり、編集部に怒鳴り込んで来たものだ。だから腹を割って議論が交わせた。今の役人はいきなりFAXを送り付けて『謝罪文をよこせ』という」

と嘆く。
   一方で、役人は既存のメディアを恐れなくなっているのではないか、という不安も感じるという。
   その背景には、官公庁自身がインターネットという新たな武器を手にした、という面がありそうだ。