JR秋葉原駅近くの区営による有料公共トイレの模型を使って説明する小林さん。設計事務所の壁には、これまで手掛けてきたトイレの写真が展示されている。5日、東京都文京区のゴンドラ事務所で。(撮影:佐藤学)

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東京都には東京駅、品川駅、新宿駅などに有料やチップ制のトイレがあるが、千代田区は10月、JR秋葉原駅近くに区営による都内初の有料公共トイレをオープンする。同区から依頼を受けたのは、設計事務所ゴンドラ(東京都文京区)の1級建築士で代表の小林純子さん。

 小林さんは、これまで数々の公共トイレを設計してきたほか、現在文部科学省の災害におけるトイレプロジェクトに参加し、日本女子大などでトイレの設計や考え方について講義している。その小林さんが、「今回の有料公共トイレは、千代田区がこれまで抱えてきた公共トイレ問題の打開策へ踏み出した一歩」と評価し期待を寄せている。

 千代田区には現在26カ所の公共トイレがある。各トイレの清掃は毎日1回以上行い、水洗のセンサー設置やBGMを流すなど、明るく、清潔なトイレ作りに年間約5000万円の予算を投じてきた。しかし、2003年に同区が実施した公共トイレの実態調査では、女性利用者は全体の3%に過ぎないことを知らされた。公共トイレは、「臭い・汚い・暗い・怖い・壊れている」というイメージが払拭されない。区は打開策として、JR秋葉原駅近くに有料公共トイレを開設することになった。
 
 そこで問題になるのが、利用者の有料化に対する意識だ。東京鉄道会館は、05年に東京駅周辺にある5カ所(有料トイレ1カ所を含む)のトイレ前で有料トイレについてのアンケートを実施したが、その結果が興味深い。トイレの有料化に「賛成」の回答は45%、「反対」は27%、「どちらでもない」が28%だった。「賛成」の理由は、清潔や安全・安心が、「反対」の理由はお金を払いたくないが、それぞれ上位を占めた。有料トイレ前での回答では、「賛成」と回答した人は75%に上った。小林さんは「有料トイレの普及によって、利用者の公共トイレ有料化に対する認識がもっと向上すると思います」と予想する。

 千代田区が約1億円の予算を投入して建設中のJR秋葉原駅の有人・有料トイレは、喫煙所を隣接させ、コンピューターを設置するなど、情報センターとしての役割も含む。小林さんは、秋葉原という街にやってくる人たちとそのニーズなどを考え、都会のオアシスの場でありながら、情報センターとしての機能を合わせ持つ多様化型トイレを設計した。使用料は100円。「区営の有料トイレは、公共トイレの未来に向けて一歩踏み出す社会実験として画期的な意味を持っています」と小林さんは語った。【了】

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