国土交通省に事情聴取されたシンドラーエレベータの幹部が2006年6月9日、「身の危険を感じた」と110番、警察官がかけつけるという騒ぎを起こしていた。取材陣が詰め寄ったというわけでもないのに、幹部は3時間も省内に閉じこもり、失笑を買った。

   このトラブルは6月9日、国土交通省がシンドラー社に対して事情聴取を行った時に起きた。3人の幹部が国土交通省の担当者に東京都港区の死亡事故や、日本各地の同社製エレベーターの不具合について説明し終えた午後2時20分ごろ、廊下に姿を見せた3人に、集まった約30人の報道陣が「どのような説明をしたんですか」などと質問した。3人は無言で、逃げるようにその場を立ち去った。

幹部はシンドラー社に「身の危険を感じた」と電話連絡
シンドラー社幹部が3時間にわたって「籠城」した国土交通省。関係者の失笑を買った
シンドラー社幹部が3時間にわたって「籠城」した国土交通省。関係者の失笑を買った

   しかし、そのうちの1人が、出口の方向を間違え、廊下の突き当たりで立ち往生した。報道陣が近寄ると、国交省2階の住宅室資料室に逃げ込み、出てこなくなった。

   トラブルはそれだけでない。その幹部はシンドラー社に「身の危険を感じた」と携帯電話で連絡する。すると、警視庁麹町署員3人が国交省に駆けつけた。電話を受けたシンドラー社が110番通報をした、ということらしい。署員は報道陣の前を通り、国交省の建築指導課に入っていったが、15分程度で帰っていった。「どうでもいい」出来事と判断したのだろう。

   閉じこもった幹部に対し、報道陣は取材交渉の代表を立てて「取材に応じて欲しい」と説得する。同省の建築指導課職員も加わり交渉するものの「コメントができる立場ではない」「映像を撮られたくない」などと話し、記者らが離れるまで室内から出ない意向を示した。そして、その“篭城”は3時間に及んだ。

「詰め寄ったわけではないのに、なぜか非常に警戒」

   この様子を目撃した共同通信記者は、JINビジネスニュースの取材に答え、現場の様子を話し、そしてこう言った。

「私たちが幹部に詰め寄ったわけではない。でも、なぜか非常に警戒していた。建築指導課職員を通じ、カメラも回さないし、質問もしないと伝えたら、帰っていった」

   シンドラー社は06年6月12日、ケン・スミス社長らが死亡事故以来初めて記者会見し、「事実確認に重点を置きすぎたため情報開示が遅れて、遺族や住民の皆さまらにおわび申し上げます」と初めて謝罪した。しかし、「シンドラーは安全と品質に最大限の配慮をしている。不具合の通報は保守・管理会社に入る。保守・点検作業による適切な作動の確保が非常に重要」とし、これまで通り“事故について当社は関係ない”という立場を示した。