24日、御手洗キヤノン会長に舵取りをバトンタッチする奥田日本経団連会長(資料写真:徳永裕介)

写真拡大

日本経団連の奥田碩会長は24日午後の総会で、御手洗冨士夫新会長に舵取りをバトンタッチする。2期4年、旧日経連会長時代を含めると7年間にわたって「財界総理」の座にあった奥田氏は、積極的に自助努力を促し、企業経営に新しい流れをつくろうとする姿勢が見られた。

 今月18日の退任会見で「格差社会といわれるが、あまり格差格差と言わず、努力することが大切。このことを日本人は忘れてはならない」と語った奥田会長。今年の年明けには「正月にテレビを見ていると、日本という国はなんと恵まれた国だと思った。格差格差というが、差がよしんばあるにしても差をつけられたほうは凍死したり、餓死していない」と指摘しており、「あまり勝ち組・負け組と言いたがるのは、そもそも間違いじゃないか」とも話している。

 また奥田氏は、官から民への改革を訴える小泉首相を積極的に支持した。小泉改革の司令塔ともいえる経済財政諮問会議の民間議員に就任したほか、財界からの政治献金も復活させ、政治への影響力を強めた。昨年7月、国会が郵政民営化をめぐり対立が激化している最中には「経済界として最大限の力で支援したい」と小泉首相をバックアップしたりもした。

 その後、総選挙を経て郵政民営化法案は成立。このように日本社会が自由経済への流れを加速する中、奥田氏は新たに台頭してきた楽天<4755>、ソフトバンク<9984>、USEN<4842>などIT企業の経団連入りを後押しした。フジテレビ<4676>とライブドアのニッポン放送株争奪戦の最中には、密かにライブドアの堀江貴文社長(当時)と面談し、激励したともいわれ、新興企業への期待は大きかった同氏。

 それだけに、任期終盤に相次いだ企業の不祥事は無念だったようだ。今年1月、ライブドアへの強制捜査が行われると、自身が主導したライブドアの経団連入会について「ミスったというか、早すぎた」と語っている。

 次期会長はキヤノン<7751>の御手洗冨士夫氏。鉄鋼や電力など重厚長大型の企業が主流の財界に、“新しい流れ”をつくろうという奥田会長の思いは今も強い。奥田会長は「ソフトや先端技術産業を視野に、仕事をしてほしい」とエールを送る。御手洗経団連の挑戦は、今日始まる。【了】