【ファンキー通信】年間3万人!急がれる自殺対策の現状は?

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 年間の自殺者が3万人を超え続けている、現在の日本。「自殺は人ごと」とは過去の話、いつ自分の身のまわりに起きても不思議ではない。そんな世界の中でも「自殺大国」となりつつある我が国で、自殺対策の現場はいったいどのようになっているのだろうか? 現場の生の声を聞くため都内で行われていた自殺対策の現状と、今後の在り方を考えるシンポジウムに参加した。

 WHO世界自殺予防デーでもあったこの日、会場には100人を超える自殺対策関係者が全国各地から集まっていた。出席者は自殺予防の現場、自死遺族ケア、研究機関、医療現場、自殺に関する政策担当など、その専門の分野はさまざま。「自殺対策のグランドデザインを考える」と題され、「自殺対策、遺族ケアの現状は?」「そもそもなぜ自殺を予防しなければならないか?」などの問題提起のもとディスカッションが行われた。

 自殺者増加が社会問題ともなり、自殺志願者の相談や遺族ケアを行う団体は格段に増えているが、まだまだ足りていないのが現状。そのほとんどが民間団体で、独自の方法で自殺問題を何とかしようと活動している。電話での相談や当事者が集まり、自分の体験や気持ちを話し合う場を設けているところが多く、同じ苦しみや体験を持つ者同士が語り合うことで、その痛みを和らげ、前に進むきっかけになるという。また、近年の自殺急増を深刻に受け止め、本格的な対策に力を入れている研究機関や医療現場からの報告も多く寄せられた。

 今回の議論から、日本の自殺対策が抱えるいくつかの問題点が見えてきた。一つは、民間団体と行政や医療機関との繋がりの無さ。お互いの情報交換や連帯がなされていないため、遺族がどこに相談したらよいのか分からず、孤立してしまうケースも多い。

 もうひとつの大きな問題として、自殺がタブー視されてきたため、その現状の把握やデータの分析が十分に行われていないということが挙げられた。自殺の問題を根本から解決していくためにも、きちんとした調査と結果の分析が必須。そのデータをもとにして、今後の対策を立てていくべきだという声が多く聞かれた。

 最後には、このシンポジウムを主催したNPO法人ライフリンク(http://www.lifelink.or.jp)代表の清水康之さんが、「今後もこのような機会を設け、みなさんとの繋がりを広げていきたい」とまとめ、今後も自殺問題の解決のため、民間、行政に関わらず各団体の協力を深め、取り組んでいくことが確認された。

 このシンポジウムに参加して強く感じたのは、参加者全員の「これ以上、辛く悲しい思いをする人を生み出したくない」という想いだった。今、この時もどこかで自殺を考え思い悩んでいる人、大切な人を失い苦しんでいる人がいる。一人でも多くの人を救うため、この問題に対する対策が急がれる。(文/verb)