バイオベンチャーのディナベック(本社・茨城県つくば市)は、国立長寿医療センター(愛知県大府市)と共同で、アルツハイマー病の治療ワクチンの開発に本格的に着手した。治療薬は、同社が開発した細胞質型RNAベクターを用いた遺伝子ワクチン。動物実験では、1回の投与で高齢マウスの大脳の老人斑が減少した上、副作用がないことなどを確認した。同社は、2、3年後の臨床試験を目指している。

 同社によると、アルツハイマー病には、大脳でアミロイドβ(amyloid-β)というタンパク質が凝固、沈着し、それによる老人斑の形成が原因である、との説があり、同社は、この仮説を基に研究を進めている。ワクチンは、細胞内に遺伝子を効率よく運ぶ新しい概念の細胞質型RNAベクターである「センダイウイルスベクター」を投与して、生体内に抗体をつくらせ、老人斑を除去するという。

 動物実験の結果、前頭葉、頭頂葉などいずれの部分でも老人斑が減少。具体的には、◇寿命に近い高齢なマウスにも治療効果がある◇これまでの研究で報告された髄膜脳炎の副作用がない◇鼻からの1回の投与で有効、などの成果を確認した。細胞質型RNAベクターは、理論的には遺伝毒性がなく、細胞のがん化などの副作用がないという。

 同社では、安全性の確認など実験が順調に進めば、臨床試験や承認申請などを経て、10年後の2015年にも完成するとしている。【了】