学生の窓口編集部

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タスマニアの小さな村にあるロス・ビレッジ・ベーカリー(The Ross Village Bakery)には、毎年何千人もの日本人が訪れています。

それは、誰が言い出したのか、この店がアニメ『魔女の宅急便』の舞台だと思われているからです。しかし実際には、アニメ製作者の誰かがここを訪れたという記録はありません。

この現象について研究論文をまとめたタスマニア大学のクレッグ・ノリス博士は、この巡礼が既に15年以上も続いている点が興味深いと語ります。

パン屋の経営者カール・クロスビー氏は、時には大型バスでやってくる日本人を、毎日50人は歓迎しているそうです。

そのうちの何人かは、キキの衣装を身にまとったコスプレヤー達です。

「みんな、すごく嬉しそうな顔をして店に入ってきて、キャーキャー言いながら飛び跳ねるんだ。」とクロスビー氏は話します。

「頭に大きなリボンをつけて、小さな赤い靴を履いた女の子達も来るね。そして、オーブンの前に立って写真をたくさん撮るのさ。その後、コーヒーを飲んでバニラスライスやホタテパイを食べていくよ。」

いつから、ここが『魔女の宅急便』の舞台だと言われ始めたのか誰にも分かりません。

しかしノリス博士は、この地が愛される理由を次のように話しています。「例えば、ゲストブックを読むと、日本からオーストラリアに来た女の子の話が書かれています。恋人と別れ、仕事もうまく行かない。でも、この場所に来て全て納得できたようです。
彼女は聖地を見つけ安心感を得ています。逆境に挑戦して打ち勝つ力を得た、物語の中のキキのように。」

「恐らく、ロスというタスマニアの小さな村の雰囲気が、映画の中で設定された親切な田舎町の雰囲気にとても近いのだと思います。コーヒーとお菓子があって、いつでも歓迎されるような雰囲気です。」

日本人訪問者の度重なるリクエストに応えて、ベーカリーの2階にあるロフト部分が、キキの部屋のように飾られるようになりました。

ノリス博士は、物語とこの地との関連性が、パン屋の主人によって作られたり演出されたものではなく「大衆によるボトムアップ(湧き上がる)現象」であることが面白いと言います。

タスマニアのロスは、ホバートとローンセストンの中間点で決して便利な場所ではありません。でも人々は、そこにある一軒のパン屋を訪れたいと思うのです。

Ross a hot spot for fans of Japanese anime classic Kiki’s Delivery Service
http://www.news.com.au/travel/travel-ideas/ross-a-hot-spot-for-fans-of-japanese-anime-classic-kikis-delivery-service/story-fnjpja3r-1227282088221