おまちかねの「ユリ熊嵐」9話は、あの人(クマ?)が再登場ギャウギャウ。

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「愚かな娘。スキをもらえず、奈落に落ちた」

屋上で向き合う椿輝紅羽と百合城銀子。百合ケ崎るるが雷鳴の中、何かを叫ぶ。銃を構える紅羽。指は引き金にかかり、力がこもる……。
「いったいどうなってしまうのか!?」というヒキで終わった「ユリ熊嵐」8話「箱の花嫁」。その1週間後に放送されたのは、声優座談会と幾原邦彦監督×ボンジュール鈴木対談の「8.5話」だった。焦らしプレイ……! そうと知らずに見た視聴者は「じ、実写!?」となったり「今日、作画すごいな(※「実在性ミリオンアーサー」などでよく見られるお約束のネタ)」となったりした。
そして3月9日。待ちわびた9話「あの娘たちの未来」が始まった。

(1話/2話/3話/4話/5話/6話/7話/8話)

「そう、銀子は大きな罪を犯した。銀子は純花ちゃんを……」
「……! 私はクマを許さない。私はクマを破壊する!」
鳴り響く銃声。屋上から銀子が落ちていく。それを見て、箱仲ユリーカはひっそりと笑みをもらす。
かつて百合が咲いていた花壇の向こう、人とクマの世界を分かつ空の真ん中で、銀子は眠っていた。そこにいるのは……3話で紅羽に撃たれて退場した百合園蜜子だ!
「君は……死んだはずだ。ガウガウ」
「そうね、死んだわ。今の私はあなたにしか見えていない。私は、あなたのここにひそむ、欲望という名の幽霊。……ふふっ、ということにしておきましょ」
そして蜜子の口を借りて語られる、銀子の「罪」。銀子が泉乃純花に何をしたのかが明かされる。
「私は……純花が邪魔だったんだ」
蜜子はスタイリッシュに脱衣しながら銀子に囁く。
「スキは凶暴な感情、スキは相手を支配すること、ひとつになりたいと相手を飲み込んでしまうこと……」

どうしたって連想するのは、幾原監督の前作「輪るピングドラム」だ。「ピングドラム」のテーマは自己犠牲も含んだ「愛」。そして「愛」をもらえなかった「幽霊」「呪いのメタファー」として渡瀬眞悧(通称サネトシ先生)が登場した。
「ユリ熊嵐」は、その「愛」の裏返しともいえる「スキ」が描かれている。「スキ」はキラキラとしたあたたかいものではあるが、同時に嫉妬や独占欲をともなうものでもある。人によって「スキ」の形は違う。そして蜜子は「幽霊」「欲望」として、死んでもなお呪いをふりまく。
(あと、女の子がスタイリッシュに服を脱いでいくところも「ピングドラム」の生存戦略バンクを思い出したが、そこについて語りだすと無限に話が脱線していくので以下略。「ピングドラム」BD-BOXは絶賛発売中です)

箱仲ユリーカと、紅羽の母・澪愛のあいだで起こった出来事は、まさに「スキ」が招いた悲劇だった。友達としての最大限の「スキ」を抱いていた澪愛と、ひとりじめにしたい「スキ」を抱いていたユリーカ。そのすれ違いは、ユリーカが澪愛を食べてしまうという結末を招いた。しかもユリーカは、それでもなお満たされていない。
蜜子の囁きかける欲望に忠実になれば、待っているのはユリーカと同じ未来だ。ユリーカと澪愛、銀子と紅羽は、わかりやすい対称関係になっている。
視聴者はユリーカの末路を知っているが、もちろん作中の銀子にはわからない。おまえーっ! そのルートはなーっ! バッドエンドがなーっ!

ひとつポイントになってくるのは、るるの存在。澪愛以外に「大切なもの」を持たなかったユリーカとは違って、銀子には銀子を「スキ」でいてくれるるるがいる。
しかし、銀子はるるの「スキ」をないがしろにし、見ないフリをしている。蜜子の囁きに耳を貸してしまった銀子は、はたして再びるると向き合うことができるんだろうか……?

EDテーマの「TERRITORY」のジャケットイラストは、三角形が散りばめられている。紅羽と銀子とるるの3人は、三角関係のようでいて、現状はるるがひとりぼっちになっている。るるが三角形に加わることができるかどうか、めちゃくちゃハラハラしています。

(青柳美帆子)