TOEIC300点台の人も激変「中学英語の暗唱」

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■文法は詰め込むな“染み込ませ”なさい

いきなりだが、下にあげた10の日本語を英語に訳してみてほしい。(※解答は本文末)

[1]彼は彼女に親切です。
[2]あの少年たちは毎日この公園に来ますか?
[3]これは誰の自転車ですか?
[4]彼はどのようにして学校に行きますか?
[5]僕は冷たい飲み物が欲しい。(somethingとcoldを使って)
[6]彼女はこの町に10年住んでいます。
[7]なぜ彼女はそんなことをしたのですか?(whatで文を始め、動詞makeを使用すること。そんなこと=such a thing)
[8]この机は誰によって作られたのですか?(受動態)
[9]彼はどこへ行くべきかわからなかった。
[10]彼らが訪れた村は地図にない。(be on the mapを使って)

「全問正解は厳しいと思われるかもしれませんが、いずれも中学で習う基礎的な単語・文型を用いて作る問題です。これに詰まる人が、いきなりTOEICの対策本や問題集を始めても、手が合わないでしょう」

TOEIC対策を教えてもらいたいとやってきた人に「中学英語からやり直しましょう」と言うと、大抵は唖然としたり、不満気な表情を見せるという。しかし、ここを疎かにしては、先がない。

「付け焼き刃でも速読の練習を積めば、あるいは100〜200点程度の上積みは可能でしょう。でも、伸びるのはそこまで。早晩、基礎の脆さが露呈して、結局はこのレベルをやり直す羽目になるんです。逆に、ここできちんと基礎固めができれば、ゆくゆくは700点、800点と、どんどん上を目指していける」

森沢先生いわく、スコアアップは「土台に固定したゴムを、引っ張って伸ばしていく」イメージ。土台をしっかり、高い位置に築くことで、高い位置までラクに届かせることができる。ここははやる気持ちを抑えて、中学英語[文法]のテキストを用意しよう。

人によっては「学校英語は苦痛だった。よりによって文法からやり直すのか……」と、暗澹たる気分になっているかもしれない。

「使う教材は同じでも、使い方が違うので大丈夫。ただし今度は、問題を解き、答え合わせをしておしまいではありません。何度も声に出して読み、諳んじて、例文が即座に口をついて出るまでやってください」

例えば「私は寿司を食べたことがあります」という例文があれば、まず文構造を確認しながら“I have eaten Sushi before. I have eaten Sushi before. I have eaten Sushi before.”と3回、読み上げる。次に字面を追わず誰かにこの台詞を言っているシーンをイメージしながら“I have eaten Sushi before……”と3回、繰り返す。

「普通に問題を解くより数倍も時間がかかりますが、これを端折ってはいけません。テニスの素振りや楽器のフィンガリングと同じで、頭で理解したことでも体に覚え込ませるには、こうした作業が必要なんです」

詰め込みならぬ“染み込ませ”。これをやるには「正しい読み方」も覚えなければならないが、今どきはほとんどのテキストに音声CDが付いているので、発音を確認するのはさほど難しくはない。

「例えば、dangerousの綴りを“ダンゲロウス”と唱えながら書いて覚えた人がいます。もちろん字面を見ればわかるでしょうが、リスニングでネーティブの言う“ディンジュラス”が聴こえたときに、パッとそれとわかるかどうか。発音できることは、聴きとれることでもあるのです」

こうして1冊の文法テキストを最後までやり終えたら、最初のページに戻る。同じことを2周、3周……と繰り返すのだ。5周目を終えたら、次の文法テキストに手を付ける。

「すでに1回やったことですから、周回を重ねるほどラクに、速く、回せるようになります。中学英語で覚える文法は限られていますから、2冊目のテキストは単語や例文が変わるだけで、新たに覚えなければならないことは格段に減っています。文法テキストは2冊もやれば十分です」

このやり方で基礎を固めれば、長文読解でもリスニングでもまったく歯が立たないということはなくなる。さらに、海外旅行に不自由しない会話力も自然と身についてしまう(日常会話の85%程度は中学2年までの英語でカバーできる)。

とにかく何度でもいいから、口を動かし、声に出して、読み、諳んじることだ。

「この学習法は、図書館や喫茶店ではできません。語学の習得は静かにはできないからです。トイレでも、ガレージの車の中でも構いません。心おきなく声が出せる場所を確保してください!」

■スコア300点台の人のための学習プログラムマップ

●中学1年からやり直す文法

1)簡単な文法の教科書を使って基礎を固める
問題を解く→答えと解説を読んで納得→完成した文を10回音読→教科書を読まず10回暗唱→問題を解く→……と、1冊の教科書を5周繰り返す
2)基本の文型を瞬時に使いこなせるようにする

●声に出して何度も読むリーディング

1)自力で大まかに読む
・文構造を自分なりに分析
・わからない部分を明らかに
・時間をかけない
2)解説の力を借りて読む
・辞書を引き完璧に理解
・未知の単語を覚える
3)2〜3日後にもう1度読む
・反復で読解を定着させる

●リスニングでも声に出すリスニング

1)耳だけで聴く
・何度聴いても理解できない部分が残ったら次へ
2)文章をざっと読んで聴く
・話の流れをつかんで聴く
・音だけでわからなかった部分を目で確認
3)文章を精読して聴く
・英文の理解を明瞭にする
・構文も単語も理解しながら
4)音読・リピーティング・シャドーイング
・何度も織り交ぜて読む

■中学英語からのやり直しで、900点レベルまで使える盤石の基礎を築け!

『くもんの中学基礎がため100% 中1英語・中2英語・中3英語(文法編)』くもん出版
……三単現のS、過去形、受動態、完了形、感嘆文、関係代名詞…全部おさらい。

『英文法レベル別 問題集1(超基礎編)・2(基礎編)』安河内哲也著 東進ブックス
……[1]は公立高、[2]は難関私立高受験レベル。思った以上に忘れている!?

『ハイパー英語教室中学英語長文1(超基礎からはじめる編)・2(入試長文がすらすら読める編)』大岩秀樹・安河内哲也著 桐原書店
……リスニング練習にもぴったり。CD付き。

『英語長文レベル別 問題集1(超基礎編)・2(基礎編)』安河内哲也・大岩秀樹著 東進ブックス
……やさしい英文で基礎固め。構造分析や語彙リスト、解説が丁寧。CD付き。

『英会話・ぜったい音読 入門編』
國弘正雄・千田潤一・久保野雅史著 講談社
……音読で英語回路を作る本。基礎を大事に、正しい読み方を。CD付き。

『DVD&CDでマスター 英語の発音が正しくなる本』鷲見由理著 ナツメ社
……発音を身につけるには発音記号も覚えておきたい。CD/DVD付き。

問題の解答

[1]He is kind to her.
[2]Do those boys come to this park every day?
[3]Whose bicycle is this?
[4]How does he go to school?
[5]I want something cold to drink.
[6]She has lived in this town for ten years.
[7]What made her do such a thing?
[8]Who was this desk made by?
[9]He didn't know where to go.
[10]The village(which/that)they visited isn't on the map.(他にも正解あり)

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森沢洋介(もりさわ・ようすけ)
1958年、兵庫県生まれ。青山学院大学仏文科中退。大学入学後に独自の勉強法で日本を出ることなく英語を覚える。予備校講師など経て89〜92年アイルランドのダブリンで旅行業に従事。千葉県浦安市で「六ツ野英語教室」を主宰。著書に『英語上達完全マップ−初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法』(ベレ出版)などがある。

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(文=渡辺一朗 教えてくれた人=森沢洋介先生)