「子ども」は「子供」で統一します 文科省「差別表現でない」と公文書で使用
「子ども」と「子供」、書き方としてはどちらになじみがあるだろうか。ここ数年、差別助長を防ぐため「障害者」の表記を「障がい者」に見直す動きが広がっているが、実は「子供」も「差別的な印象を与える」として長らく敬遠されてきた。
行政でも「子ども手当て」「子ども・子育て支援法」など「子ども」が優勢だが、ここにきて文部科学省が「子供」表記の統一に乗り出した。
「子供」のイメージは「お供え物」「お供する」
文科省が2013年6月下旬、公用文中の「子ども」の表記を「子供」に統一した、と複数の新聞が報じた。同省の公文書では常用漢字を使うのが原則だが、「こども」については漢字の「子供」ではなく「子ども」が多用されてきた。「供」という字が「お供え物」「お供する」などを連想させ、差別的な印象を与えるというのがその理由だ。
しかし一方で、漢字とひらがなを交ぜて表記する「交ぜ書き」を問題視する声も以前からある。「はれ、ときどきぶた」シリーズで知られる児童文学者の矢玉四郎氏はウェブサイト「子ども教信者は目をさましましょう」を運営しており、下記のような主張を展開している。
「子供は熟語です。熟字訓というもので、いわば当て字です。コドモという音は万葉のむかしからあります。(中略)江戸時代にコドモに、子供という字をあてたようだ。子供は当て字で二字熟語です。子ども、こ供とは書けない」
今年3月には自民党の木原稔議員が「子ども」の交ぜ書き問題を文科省委員会で取り上げた。同氏はビデオレターでも「子供に対して『子どもは漢字で書きなさい』といいながら、大の大人が交ぜ書きにしている。さらに公用文でも交ぜ書きが横行しているのには違和感を覚える」と主張している。こうした指摘を受け、文科省では本年度に協議がなされ、差別表現でないと判断、統一に至った。
新聞記事ではどちらも使われている
教育界のお役所が重い腰を上げて決定したルールだが、熊本日日新聞(「くまにちコム」8月30日配信)によると、同省は「各教育委員会に『子供』を使うよう呼び掛ける考えはない」との見解を示しており、現状はあくまで省内の公文書に限るようだ。
メディアでは、表記は「子ども」が多い。記者が使用する「記者ハンドブック」(第12版・共同通信社)をみてみると、「子供・子ども」と記載されており、「一般的には『子ども』が多く使われている」と注釈が入っている。だが広辞苑には「子供」としか書かれておらず、この説明はハンドブックならではだろう。
実際には、新聞各社の記事ではどちらの表記も使われているようだ。以前、校閲部長の「コドモは『子供』と書くべきだ」というコラムを載せている産経新聞でも「子ども」表記の記事は存在する。メディアでも、いずれの表記を用いるかについて明確なルールを設けていないとみられる。