100円ショップでよく購入する商品は?

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■衝動買いの心理を自己分析すると……

私は仕事柄、毎日のように100円ショップを覗いていますが、ビジネスマンの皆さんにも週に一度は足を運んでみることをお勧めします。なぜかというと、100円ショップは、消費者のニーズによって売り場の配置を上手に替えているからです。クリスマスの時期ならクリスマスグッズがいちばん目立つところに置いてあります。頻繁に足を運んでみると、世の中の変化や動きがわかるようになります。

皆さんも100円ショップの商品はなぜ全部100円なんだろう? と疑問に思ったことがあると思います。100円ショップのビジネスモデルは簡単明快で、「50円台で仕入れて100円で売る」、これが基本です。大手チェーンでは、これを逸脱することはあまりありません。逸脱すると商品管理が複雑になり、コストがかかってしまうからです。ですから、賢く買い物をしようと思ったら、100円ショップに行く前にまず大型スーパーに行き、同類商品の値段をチェックしてみましょう。最近は78円、88円など100円以下で買える商品も出回っていますから、そういう商品をわざわざ100円ショップに行って買う必要はないわけです。

今、100円ショップが力を入れているのは文房具類。町の文房具屋さんが減少してしまったため、100円ショップで文房具を買うという人が増えています。ほかに小学生がこぞって買うようになったアイシャドーなどの美容用品、お風呂用品、台所用品、トレイなど整理用品、パソコンやコンセント回りなどのプラスチック製品もよく売れています。原油高で原材料は高騰しているのに値上げせず、100円に抑えているのでお得感があります。店舗にとっては値上げしないで、1人の顧客にいかに多く買ってもらえるかを考えています。そして、衝動買いを促すような売り場づくりをしています。

よく見てみると、確かにパスタケースの横にトングがあったり、ポチ袋の横にハガキがあったりと、連鎖反応で買ってしまうように商品が配置されている。レジ横に電池やライターを置いているのも、「まだあるけれど、ついでに買い置きしておかなきゃ」という消費者心理をついたものといえます。

このように、100円ショップには消費者を惹きつける魅力的な仕掛けが随所にありますが、気をつけなければいけないのは、つい利用頻度の低い、消耗品以外の商品を買ってしまうこと。1万円の商品を買うときにはよく考えるのに、安い商品を前にすると、人は思考能力が落ちてしまいます。「100円なんだからこの機会に買っておかなくちゃ」と思うのは店側の思うつぼ。どんなに安くても、利用頻度が低ければコストパフォーマンスは低くなります。モノの適正価格は「商品価格÷利用頻度」。高額でも時計やホームベーカリーが売れているのは利用頻度が高く、結局は得になるからです。

長年デフレが続き、モノの値段が下がり続けています。そのことを喜ぶ人もいますが、将来を考えれば、よいこととはいえません。もしTPPが導入されれば、高くても日本のおコメや牛肉を食べたいと思う外国人は大勢いると私は思います。その一方で、日本人が日本のおコメを食べられなくなるかもしれません。ですから、私は日本の雇用に貢献するために、なるべくメード・イン・ジャパンの商品を買っています。日本製を買うことが日本人の雇用に貢献していることを念頭に置きながら、賢く買い物してください。

※すべて雑誌掲載当時

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流通ジャーナリスト 金子哲雄
慶應義塾大学卒業後、ジャパンエナジーを経て独立し、テレビ、ラジオ等で活躍。最新刊『学校では教えてくれないお金の話』など著書多数。

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(流通ジャーナリスト 金子哲雄 構成=中島 恵 撮影=矢木隆一)