この度は、チームの地区優勝ポストシーズン・ゲームの出場、まことにおめでとうございます。

 あなた自身にとっても、シアトル・マリナーズ時代の2001年以来のポストシーズン・ゲームですので、気持ちが入るでしょうし、私も一ファンとして活躍を期待しています。

 長らく埼玉西武ライオンズを応援している私としては、あなたはパリーグの誇りです。
 あなたがメジャーリーグで記録を更新する都度、現地や日本で騒がれましたが、私たちパリーグ党は、オリックスブルーウェーブ時代から知るあなたを誇らしく思っています。

 それだけに、チームが地区優勝を果たした際のあなたの喜びようには、正直、ショックを受けました。あなたにはヤンキースの一員ではなく、ヤンキースを倒す側にいてほしかったからです。

 パリーグは今でこそ注目されるようになりましたが、つい最近までは、言わば日陰者でした。球場のスタンドには空席が目立ち、地上波での全国放送も稀。どんな記録が達成されても、マスコミの扱いは小さく、ファンも歯がゆい思いをしていました。
 だからこそ、注目度が高い読売ジャイアンツとの試合には選手はもちろん、私たちファンも、いつも以上にエキサイト。交流戦、日本シリーズでは「打倒、ジャイアンツ」を掲げ、選手、ファンが一致団結しています。
 ブルーウェーブにいたあなたなら、私たちパリーグ党の気持ちがわかると思います。

 そんなあなたが、まさか、ニューヨーク・ヤンキースでプレーすることになるなんて。

 選手の移籍が激しいメジャーリーグですので、ヤンキースに活躍の場を移すのも、仕方がありません。あなたがマリナーズを出たのも若手選手を思ってのことでしょうし、私も名門球団に乞われたあなたを、むしろ誇りに思うべきなのでしょう。

 しかし、よりによってなぜ、ヤンキースなのでしょうか

 ヤンキースは、ジャイアンツ以上の人気球団です。野球ファンなら、知らない方はまずいないでしょう。
 あなたもマリナーズで2010年、10年連続200本安打の大記録を達成した際、現地ではヤンキースの選手たちと比較され、一部の心無い方から「しょせんは、田舎球団の選手による記録」と揶揄されたそうですね。

 でもパリーグ党の私としては、あなたには名門人気球団の一員ではなく、彼らを倒す側にいて欲しかった

 それだけに、チームメイトと地区優勝を祝うあなたの姿には、ショックを隠しきれませんでした。

 あなたのブルーウェーブ時代の先輩で、阪急ブレーブスの投手、足立光宏には、1976年の日本シリーズで、「騒げ、もっと騒げ…」と呟きながら投げたという逸話が残っています。
 相手はそう、ジャイアンツ。両軍3勝3敗で迎えたシリーズ最終戦。後楽園球場につめかけた5万人のジャイアンツのファンの大歓声の中、足立は相手を挑発することで自らを鼓舞しました。そして勝利を挙げたのです。

 イチローさん。あなたには第二の足立を夢見てました。そのバットで人気球団を打つ崩すシーンを思い描いてました。

 わが国ではもう、あなたの来年の去就が騒がれていますが、来年こそ、ヤンキースを打倒する球団でプレーすることを期待しています

 ポストシーズン・ゲームでの活躍を願っています。

 ボストン・レッドソックスの一ファンより

敬具


追伸
 シーズン最終戦、なにもあそこまで、けちょんけちょんにレッドソックスを倒すこたぁ、ねえだろ(涙)