2014年ブラジルW杯アジア3次予選で、日本は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦とウズベキスタン戦で2連敗した。来月からいよいよ始まる最終予選を前に、はたしてアルベルト・ザッケローニ監督はどうチームを立て直すのか。急きょ組まれたこのアゼルバイジャン戦で明るい光は見えたのか。

アゼルバイジャン戦のメンバー発表記者会見の席で、ザッケローニ監督はこの試合の目的を、「海外組のコンディションを確認」「Jリーグで最近活躍している選手のプレーを手元で確認」とした。2011年8月10日の韓国戦を最後に負傷でチームを離れている本田圭佑の回復具合や、他の選手のチェックが重要なポイントだった。

結果から言えば、1つを除いて試みはほとんど達成できた。もっともその1つが大きな影を投げかけた。

試合は立ち上がりから日本がボールを支配する。15分までのボール支配率は64.3%、15分から30分までは67.0%にも達した。ところが細かなタイミングが合わず、パスが効果的につながらない。それでも本田が持ってキープすることでリズムに変化とタメが生まれた。また、香川真司はどんなボールも足下でぴたりと収め、常に相手ゴールを脅かし続けた。

皮肉にもゴールが生まれたのは日本のボール支配率が55.8%にまで落ちた時間帯の、42分のことだった。長谷部誠が2011年アジアカップ準々決勝、カタール戦の決勝ゴールが生まれたときのパスを思わせる、鋭いボールを香川に通す。香川は足下にボールを吸い付けたままドリブルでペナルティエリアに進入し、左足のキックフェイントを入れた。相手選手は完全に引っかかり体勢を崩す。香川は慌てず逆サイドのサイドネットに蹴り込んで日本が先制した。

後半に入るとアゼルバイジャンが盛り返す。60分までの日本のボール支配率は52.4%。それでも香川のクロスを本田が折り返し、岡崎慎司が合わせて追加点を奪った。

ザッケローニ監督は宣言どおり、いろいろな選手を試した。ハーフタイムには酒井宏樹、高橋秀人、さらに62分には宮市亮という3人に代表デビューを命じる。酒井は60分、素晴らしいクロスを本田に送りチャンスを演出、宮市と高橋はそれぞれシュートを放つなど、フレッシュマンにふさわしい、張り切ったプレーを披露した。

60分以降は日本の支配率が50%を割り込み、後半の平均は48.8%。それでも試合全体の平均では55.7%と優勢を保ち、結局2-0の完封勝利を飾っている。

試合が進むにつれてヨーロッパ組のコンビネーションは整ってきた。最後は疲れが見えるようになったが、この試合をこなしたことで、最終予選でのコンディションは整うはずだ。本田も前半は負傷前と変わらぬプレーを見せた。30メートルのFKをポストに当てるなど、左足の破壊力は時間限定ではあったが戻っている。

ただし、この試合でとても試したかったであろう選手が試合途中で消えた。森本が37分という早い時間に負傷交代したのである。森本について、メンバー発表の場で監督は「この数日森本選手のセリエAでの試合を見ていますが、パフォーマンスも悪くなかった」「これまではケガや経験不足が邪魔をしていいプレーが継続できなかったと思うが、素晴らしいクオリティを持っている」と期待を口にした。同時に「いい選手がケガをしているという状況でもある」と、明言はしなかったが李忠成の不在への不安を明らかにしたのだ。

現状ならファーストチョイスは前田だとして、変化を付けるのは誰にするのか。宮市は「フェイエノールトでもボルトンでも第2戦に点を取っている。ここでも取れるようにしたい」と張り切っているが、ザッケローニ監督にとって頭の痛い問題が出てきたのは間違いないだろう。(文=森雅史)