6月13日午後1時から、バンコク市内のホテルで、日本の岡田武史監督とタイのチャンウィット監督の公式会見が行なわれた。岡田監督は試合のことだけでなく、チームの現状についても語っている。

 「今、この長いキャンプをしていく中で、チームが非常に一つにまとまって、本来のチームになってきたという感じを受けています」と話し、試合に出られない選手の前向きで献身的な姿勢、アットホームなチーム内の空気を説明している。

 そして、「オマーンに比べてかなり気候も涼しいので、アグレッシブなサッカーをしていきたい。タイも、我々と似たスタイルのサッカーをしているので、非常に激しい試合になるでしょう。それを何とか競り勝ちたいと思っています」と語った。

 バーレーン対オマーン戦の結果によっては、引き分けでも3次予選突破が決まるが、「明日の試合に勝つことしか考えていない」と必勝宣言。その思いは選手も同様だ。

 「とにかく勝ち点3を取ることを一番に考えている。予選突破を決められる試合なのだから、決めてしまいたい」と遠藤保仁。さらに、出場停止の大久保や中村俊輔、松井など負傷を抱える選手も存在する状況については「明日の試合に誰が出るのかはわからない。でも誰が出ても自分たちのサッカーができる手ごたえは感じている」と話した。

 試合が行なわれるラジャマンガラスタジアムは、巨大な陸上競技場だ。大きなスタンドがピッチを取り囲むため、「ピッチが日陰になるからね。日陰のなかったマスカットでの試合よりもプレーしやすい」と長谷部や内田がホッとしたように語った。

 岡田監督就任以降、アウェーでの勝利は東アジア選手権の中国戦のみ。格下のタイとは言え、油断はできない。

 「ちょっとしたプレーでもスタンドが沸くのがタイの特徴」と遠藤は、ACLなどの経験を踏まえて語る。「アウェーで勝ち点3を手にすることは、簡単なことではない。自分たちが主導権を握って戦っていても、不用意なプレーでボールを失えば、相手のカウンター攻撃を受けることになる。オマーン戦では、多少攻守のバランスが崩れた場面もあった。自分のポジション(ボランチ)のところで、しっかりと守備をすることも重要なことだと思うし、バランスを考え、集中して戦いたい。タイのカウンタ攻撃は鋭いものがあるから」

 小柄な選手の多いタイ代表。日本にとってセットプレーが鍵を握ることはいうまでもない。そのキッカーを勤める遠藤もそれを意識し、「長身の選手が多い相手よりも、身長の低い相手のほうが、フリーキックが狙いやすいのも事実」と話した。

 右足首を痛めている中村俊は、日々痛みが軽減していたが、12日練習後には「万全の状態でない僕が出て、(途中交代で)交代枠を無駄に使ったり、もっと動ける選手が出たほうがチームのためになるのかもしれない。でもそういう自分の状態を含めて監督が決めること」と話していた。

 13日の練習後は、「練習に参加したことでのリバウンド的な痛みはあるけれど、ネガティブなものではない」と語った。そして、試合出場については「(監督から)行けそうかと聞かれた。行けるところまで頑張りたい」と出場へ向けた覚悟を固めていた。しかし、数日間練習を休んでいたこと、足首をテーピングで固めた状態での出場など、不安材料もある。06年ワールドカップドイツ大会。あの時も発熱した中村をジーコは起用し続け、結果的にグループリーグ敗退に終わった。再び悪夢が蘇らなければいいが・・・。

 コンディションの整わない選手を起用し続け、結果が出ずに、控え組が不満を抱く……というのは、どんなチームでも起こりうることだ。岡田監督がどのような判断を下すのか?予選突破という大きな結果の前に、代表チームはひとつの岐路に立っているのかもしれない。

 すべてがうまくいく方法はただひとつ。勝利を手にすることだけだ。


text by 寺野典子

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