米国時間27日、マイクロソフトは、次期Windowsにはマルチタッチ機能を搭載すると発表した。
タッチスクリーンは、一部の業務分野では既に採用されてはいるが、OSの標準入力インタフェースとしてタッチスクリーンを搭載するということだ。

これで、企業ユースではなかなか進まないWindows Vistaの導入はさらに様子見状態が続くと思われるが、このままだと忘れもしない8年前に登場し、散々な評価を受けたWindows Meと同じ扱いを受けるかもしれない。

Windows Me(WIndows Millenium Edition。 以下「Me」)は、Windows98SEの後継OSとして登場した。
当時、Windowsのカーネルは、9x系と、NT系が併存し、NT系のカーネルが安定していたのだが、プラグ・アンド・プレイなどの先進機能を取り入れ、操作も容易であるという点で、9x系のOSがパーソナルユースとして主流を占めていた。

しかし、NTカーネルを採用して安定性に優れ、操作性において9x系と同等のWindows2000がほぼ同時に発売されたことと、Me自身が多くの機能を取り入れすぎて、非常に不安定だったことなどから普及が進まず、翌年発表されたWindowsXPによって、短命のまま消えていった。

Meをプレインストールしたパソコンも発売されたが、あまりの不安定さに、メーカーの信用までもが悪くなるという始末だった。

さて、Windows Vistaが注目されたのは、最新ファイルシステムWinFSが搭載されるという情報があったからである。
WinFSは単にファイルやフォルダを管理するに留まらず、ファイルシステム自体が検索機能を持ち、様々なタイプのデータを瞬時に取り出すことができるようになるはずだったのだが、開発の難航により中止となる。

残ったのは、膨大なリソースを食う派手なインタフェースを持ったWindowsの新バージョンという事実だけであった。
セキュリティ面の強化が図られてはいるが、もちろん完全なセキュアOSではないから、統合セキュリティソフトの導入は必須で、OSとセキュリティソフトが交互に同じような警告ダイアログを出して鬱陶しいことになってしまった。

"Vista" という名称はイタリア語で「眺望」という意味を持ち、「混乱を解消し、あふれる情報を整理し、未来を垣間見せる」との意味を込めたそうだが、期待の新機能が搭載されず、様々のエディションが存在するばかりか、ドライバやアプリケーションの対応が遅れ、違う意味での混乱を招くことになった。

難航の末に大幅機能縮小してリリースされたVistaであったが、早くも2009年後半から2010年初頭には、次期バージョンのコードネーム"Windows7"が出るという情報があり、そして今回のマルチタッチ機能搭載の情報である。ますます「急いでVistaにする必要はない」と考える人が増えても不思議ではない。

マルチタッチスクリーンがどのように実装されてくるのかは不明であるが、少なくともアクセシビリティ(障がい者対応)関連においては、一定の評価は得られるものと思われる。

もしも、次期WIndowsの要求するリソースが、Vistaとそれほど変わらず、マルチタッチスクリーン等の新機能で利便性が向上するならば、やがて「Vistaって、何だったの?」という声があがるのではなかろうか。まさしく第2のMeという扱いを受けるかもしれない。

筆者も、メイン環境は未だWindowsXPである。派手なGUIで遊びたければ、サン・マイクロシステムズのProject Looking Glassで十分なのである。

(編集部 真田裕一)