「月刊少年エース」2005年3月号の特別付録「新世紀エヴァンゲリオン」下敷き。エヴァを知らない人がみたら、左下のカヲルが主人公と思われかねない予感。

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先日中野ブロードウェイを散策中に、ルパン三世(テレビ版第2期)のゲストキャラ「小山田真希」のフィギュアと突然目が合ってしまいました。このキャラは最終回のみに登場するレアキャラだったのですが、いつの間にかフィギュアになるほど知られる存在になっていたようです。このように登場回数が少なくても、人々の記憶に刻まれることとなったキャラというのはほかにもありそうですので、今回はそのあたりを調査してみようと思います。

なお今回取り上げるのは、基本的に特定のエピソードにゲスト出演したキャラのみを対象とします(ゲスト出演後、度々作品内に登場するサブキャラとなったものは除外)。ジャンルは広げすぎると収拾がつかなくなりますので、テレビアニメに限定して書いてみます。

●マチルダ・アジャン 〜戦場に舞い降りた女神〜
初登場日:1979年6月2日(第9話)
出演作品:テレビアニメ『機動戦士ガンダム』
出演回数:計5話

職業は補給部隊に所属する地球連邦軍の女性士官(階級は中尉)。武器や弾薬が底を尽き始め、希望を失いかけていたホワイトベースに物資を補給してくれた功労者です。主人公のアムロやホワイトベースのクルーたちが憧れる大人の女性として描かれ、同作品に登場する女性キャラの中でも屈指の人気を誇っています。最後に悲劇的な結末を迎え、アムロがマチルダの名前を泣き叫ぶシーンはあまりにも有名。

声を演じたのは、今や女優としても有名な戸田恵子。アイドル演歌歌手としてデビューしながらもパッとしなかった戸田恵子が、その後始めた声優業で最初に当たり役となったキャラでもあります。個人的に「軍帽が似合う女性キャラ」ランキングではずっとNo.1。ちなみに次点は『宇宙戦士バルディオス』のローザ・アフロディア(劇場版の声を戸田恵子が担当)。

●ランバ・ラル 〜職業軍人の生き様を体現〜
初登場日:1979年6月23日(第12話)
出演作品:テレビアニメ『機動戦士ガンダム』
出演回数:計5話

無骨な男性フェロモンを体中から発散させている、ジオン軍のプロフェッショナルな職業軍人です。階級は大尉で、直属の上官はこれまた男臭いドズル中将。ザビ家の四男ガルマの仇討ちを行うため、新型モビルスーツ(登場時)・グフを駆って、ホワイトベースを襲撃しました。ホワイトベースに乗り込んで白兵戦を仕掛ける大胆な部分も見逃せませんが、やはり印象的なのはアムロとの出会いのシーンでしょう。

ラル大尉は砂漠の酒場でアムロと出会います。この時アムロはホワイトベースをガンダムもろとも逃げ出すという、死刑レベルの軍規違反の真っ最中。最初は内縁の妻・ハモンに気に入られて食事をおごってもらいそうになりますが、アムロは「恵んでもらう理由がありません」とこれを拒否。その言動をラル大尉は気に入り、さらにアムロがマントの下で構えていた銃を発見すると「フフフ、それにしてもいい度胸だ。ますます気に入ったよ」と褒めるという男すぎる応対をします(これにはアムロも内心ビビりまくり)。ランバ・ラルのセリフと言えば「ザクとは違うのだよ、ザクとは」が有名ですが、この酒場でのやりとりによって、よりキャラとしての深みが増したことは間違いありません。

●小山田真希 〜宮崎駿の反抗心を代弁?〜
初登場日:1980年10月6日
出演作品:テレビアニメ『ルパン三世(第2期)』
出演回数:1話のみ(サブタイトル:「さらば愛しきルパンよ」)

小山田真希が登場する最終話「さらば愛しきルパンよ」は、宮崎駿が「照樹務(てれこむ)」名義で脚本・演出に関わった作品のひとつです(※1)。初代シリーズに関わった宮崎駿にとっては、第2期の"赤ジャケ"ルパンは商業主義に走った産物しか見えなかったようで、仕事を引き受けるのは本意ではなかった模様。そんな中でもプロとしての仕事をキッチリこなす宮崎駿の才能はやはり本物で、本作は今見ても色あせることのない傑作に仕上がっています。
(※1)TVアニメ『ルパン三世(第2期)』における「照樹務」名義の作品は、他に「死の翼アルバトロス(145話)」がある。

この最終話はシリーズ中の1エピソードとしては、ほぼありえない異質な内容なのですが、これは制作者の反抗心が表れた結果なのでしょう。そんな中でヒロイン・小山田真希はまさに孤軍奮闘。見所は小山田真希が操縦するロボット兵・ラムダの飛行シーンでしょうか。縦横無尽に空を飛ぶラムダに可憐なヒロインが乗っているというギャップが最高! 不本意ながら泥棒の片棒を担ぐにも深刻な理由があるというところも泣かせます。

小山田真希の声を担当した島本須美は、ほかにも『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスや、『風の谷のナウシカ』のナウシカといった宮崎作品のヒロインを演じています。声優・島本須美が宮崎作品に最後に出演した『もののけ姫』は、個人的に宮崎アニメワースト1なので、悲しいことこの上なしであります(何故に『もののけ姫』が世間で高評価なのか私には理解不能)。ヒロインでなくともサブキャラで構いませんので、島本さんに声優としての実力を発揮する機会を与えて欲しいと思っているのは私だけ?

●ジャギ 〜嫉妬と自己愛の権化〜
初登場日:1985年5月9日(第29話)
出演作品:テレビアニメ『北斗の拳』
出演回数:計4話

主人公・ケンシロウの義理の兄。明らかな実力不足により北斗神拳の伝承者争いから脱落し、その後は伝承者・ケンシロウへの憎しみだけで生きているという、心底どうしようもないキャラであります。その尋常でない嫉妬心は数々の名言を生み、限りなくザコキャラに近い扱いだったにも関わらず、見るものに強烈な印象を残しました。

(代表的な名言)
「俺の名を言ってみろ!!」(初対面の人間に無茶ぶり)
「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねえ!!」(ケンシロウへの嫉妬丸出し)
「目と鼻と耳がちゃんとついてる所が弟に似ている」(言いがかりにも程がある)
「どんな手を使おうが勝てばいいっ!それが全てだっ!!」(反則を全力で肯定)

最終的にあっけなくケンシロウに倒されてしまうところも完璧。これほど見事な小悪党キャラというのは、なかなかお目にかかれるものではありません。似たような扱いのキャラにアミバもいましたが、アミバはトキの劣化コピーなのでオリジナリティに欠けるところがいまひとつ。ジャギは、フルフェイスヘルメット装着という個性的なビジュアルを持つところもポイントです。

●渚カヲル 〜見目麗しい愛の使者〜
初登場日:1996年3月13日(第24話)
出演作品:テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』
出演回数:1話のみ(サブタイトル:「最後のシ者」)

カヲルは主人公・シンジの理解者として現れ、シンジもカヲルに好意を寄せていきます。悲惨なラストはともかく、この回で特筆すべきはシンジとカヲルのラブラブっぷりでしょう。このガイナックスの計算通りともいえるBL的フレーバーは、腐女子のハートを鷲づかみにしてしまいました。そして「最後のシ者」放映後の同人界にはカヲル×シンジという新ジャンルが生まれ、あっという間に広がっていったというわけです。

カヲルの魅力は、ヴィジュアル系なルックス、声が石田彰(声がイケメン)、天使のような包容力、実は使徒だという意外性などが挙げられます。これが単なる美形キャラだったならば、ここまで人気にはならなかったはずです。『新世紀エヴァンゲリオン』は謎だらけで、結局何だったのか分からない部分が非常に多い作品ですが、その一見マイナスに思える部分が見る者の想像力をかき立て、同時にカヲルに対する妄想も果てしなく広がっていったのだと思われます。

潔い生き方だからこその強烈なインパクト
「大概悲惨な結末を迎えている」というのが、今回取り上げたゲストキャラから見えた共通点でした。魅力的なキャラであればあるほど、その最後は強烈な印象を残すのでしょう(唯一無事な小山田真希も出演したのが番組の最終回なので、別の意味で結末を迎えてしまっていると言えます)。

サブキャラとしてダラダラ出演するよりも、太く短く駆け抜けて人々の記憶に残った方が勝ちなのは間違いありません。最近それに近いことをやってのけたのは『天元突破グレンラガン』でしたが、この辺りは流石ガイナックスといったところでしょうか。そういった潔い生き方をするキャラがもっと出てきてもいいと思った次第であります。一番萎えるのは確実に死んだはずなのに「実は生きていた!」という復活パターン。このパターンで成功した例はあまりありませんので、アニメ・漫画業界の方々はくれぐれも自重をお願いいたします。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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