劇場アニメのパンフレット。ヘリコプターとビルは当時まだ珍しかったCGで描かれています。CG制作の直接経費は当時1秒50万円以上かかったらしい。

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ゴルゴ13』がまさかのテレビアニメ化、というニュースを聞いてからというもの、詳細が判明する前から期待と不安が交錯する日々を送っている皆さん、お元気ですか? 思えば『ゴルゴ13』は、過去に何度か映像化されていますが、それらは全て映画またはビデオ作品であり、テレビで放映されるというのは今回が初めてになるわけです。凄腕のスナイパー(殺し屋)の世界をテレビでどこまでの表現が可能なのか、今から楽しみだったり不安だったり……。しかもゴルゴの声に舘ひろしさんが挑むという“サプライズ ”付き。今回は過去に製作された『ゴルゴ13』の映像作品を振り返りながら、これから目にする新作テレビアニメの方向性を探っていきたいと思います。

■『ゴルゴ13』(1973年・高倉健Ver.)
ゴルゴを高倉健さん(以下、健さん)が演じた、C級アクション映画作品です。同作品におけるゴルゴ登場シーンの「出オチ感」は、日本映画史上最強レベル。何度観ても『ゴルゴ13』というよりは『網走番外地』です。ライフルじゃなくて長ドスが似合いそうで困ります。この登場シーンだけで、今回の旧作レンタル代350円は回収完了であります。

驚くべきことに、この映画の出演者は健さん以外、全員が外国人。しかもセリフは全編アテレコで、舞台はイランなのに全員が日本語で話すというカオスっぷり。声だけ後録というのは珍しいことではありませんが、出演している外国人俳優が、明らかに日本語以外の言語(ペルシア語?)で喋っているので、口パクが全く合ってないのが気になって仕方ありません。健さんだけは普通に日本語で喋っているという状況も、違和感に拍車をかけています。

それでも声を演じる声優陣が豪華なので、それなりに観ることができるのは救いであります。山田康雄さん(故人)、平井道子さん(故人)、富田耕生さん、森山周一郎さん、肝付兼太さんなどの実力派を揃えるところは、腐っても東映といったところでしょうか。特にルパン三世の声優、故・山田康雄さんが、警部役を熱演しているところは隠れた見所でしょう。

残念ながらこの高倉健Ver.は、脚本や演出といった映画の基本的なところが面白くないというのが実体。健さんの存在感も声優陣の熱演も、ひたすら空回りといった印象なのです。アクションシーンも1カットが妙に長いシーンが多く、迫力不足でテンポも全体的にのんびりしてしまっています。

製作サイドとしても勝手の違う海外ロケで大変だったのかもしれませんが、もう少しなんとかならなかったんでしょうか。せっかくの素材が全く活かされてないのが、もったいなすぎです。映画作品としての評価はB級まで届かずC級というのが限界です。ただやはり、健さんのゴルゴというのは貴重なので資料的な価値はそれなりにあると思われます。これはいろんな意味で“惜しい”作品。

■『ゴルゴ13 九竜の首』(1977年・千葉真一Ver.)
ゴルゴを世界のソニー千葉が演じたB級アクション映画作品。高倉健Ver.に比べたらこれは普通に面白いです。ストーリーはある意味先が見える内容なのですが、テンポ良く話が進むのでそれなりに楽しめます。「ゴルゴ〜♪ ゴルゴ〜♪」と女性ボーカルがムーディーに歌い上げる主題歌も妖しさ全開でたまりません。
千葉ゴルゴ参上! これはレンタルビデオ店の閉店セールで偶然入手した掘り出し物。ちなみに実写版ゴルゴは2作品共にDVD化されてません。

千葉ゴルゴの特徴はなんといってもヘアスタイルでしょう。どんなアクシデントにも型くずれしそうにない強力なパンチパーマのインパクトは絶大! 身にまとったファッションも最高にイカしてます。真夜中に目立ちまくる純白のスーツ、隠密行動中とは思えないド派手な紅白のアロハ、街金の集金屋にしか見えないシマウマのようなストライプのスーツなど、スナイパーの常識を越えたセンスを見せつけてくれます。

背後に立たれるのを嫌うというゴルゴの設定も見逃せません。同作品では背後に回った幼女を、もの凄い勢いで振り向きながらにらみ付けるという予想外のシーンで表現しています。ゴルゴ役の千葉さんのお茶目な人柄が思わずにじみ出るこの名シーンはまさに必見。

香港で大ロケーションを敢行した同作品は、多数の香港スターが出演しています。高倉健Ver.と違うのは外国人俳優だけでなく、志穂美悦子さん(長渕剛さんの妻)、鶴田浩二さん(故人)といった日本人俳優も活躍しているという点。舞台も香港と日本の二ヵ所となり、演出やカメラワークは高倉健Ver.よりも凝ってます。

アクションシーンは、千葉ゴルゴのキレのあるキックに注目です。このゴルゴは絶対に射撃より格闘の方が得意そうなんですが、それも同作品の味になってます。ただ千葉ゴルゴは、俳優自身の個性が強すぎてゴルゴの映画を観ている気がしないのが難点といえば難点。これは健さんの場合も同様ということを考えると、そもそも実写でイメージ通りの『ゴルゴ13』を撮るというのは不可能なのかも……。