北村弁護士の「熱弁」にアクセス集中

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   下馬評通り福田康夫氏(71)が勝利した自民党総裁選だが、場外では思わぬ盛り上がりを見せていた。投票日当日は、ネット掲示板2ちゃんねる上での呼びかけをきっかけに、麻生支持者が自民党本部前に集結。その前日に行われた麻生氏の街頭演説でも2万人が集まるなど、永田町の勢力図とは、まったくかけはなれた様子なのだ。

投票前日の朝、集会を呼びかけるスレッドが立った

   2007年9月23日に投開票された自民党総裁選は、福田氏330票に対して麻生氏は197票。「善戦」とはいえ、大差で敗れたことには間違いない。だが、敗北したはずの麻生氏周辺のフィーバーぶりが際だっているのだ。投開票当日(9月23日)の正午ごろから16時ごろまで、自民党本部に「麻生」と書かれた紙やプラカードを持った300人ほどが集結、「麻生!麻生!」とシュプレヒコールを上げ続けた。推薦人代表の鳩山邦夫氏(津島派)が通りかかると、「鳩山さーん、頑張ってくださーい!」との声も挙がった。15時過ぎに選挙が終わり、16時前になって麻生氏が支持者の前に現れると、盛り上がりは最高潮に達した。
   麻生氏は支持者の集まり具合を見て

「多分自民党員ゼロよ。2ちゃんねるで(スレッドが)立ったんだろうけど、永田町にあんなに人が集まるなんて例はない」

と話し、感激した様子だった。

   いみじくも麻生氏が指摘したように、投票前日の9月22日朝、「2ちゃんねる」にある、大人数が集まって「オフ会」を開催するための話題で盛り上がっている掲示板「大規模OFF板」に、集会を呼びかけるスレッドが立ったのだ。タイトルは「【総裁選】9/23自民党本部決起集会【麻生氏応援】」。

「マスコミは福田寄りで真実を報道していない」
「行くなら、清潔感のある服装が良いのでは」

といった話題で盛り上がり、スレッドは8スレッド目まで伸びた。

   ただ、このスレッドが立ったきっかけは、麻生陣営の推薦人のひとり、戸井田徹衆院議員(津島派)が9月20日、自身のブログに書いた、こんな文章だ。

「23日、午後2時から両院議員総会が始まるので、議員が入場する1時ごろから党本部周辺にご参集いただき(党本部敷地内には入れませんが)麻生太郎候補への応援をお願いしたい。そこで、皆さんの声を、思いを直に議員に伝えていただきたい。マスコミによって操作されたものではなく、純粋ないのちのある声を議員一人一人に伝えていただきたい。議員の魂を揺さぶってほしい」

応援弁士動画がユーチューブに公開され、反響

   これが2ちゃんねらーに限らず、ネット住民をゆさぶった形だ。
   さらに、23日の「麻生支持集会」が盛り上がった理由のひとつは、前日の22日、麻生氏が新宿駅東口で行った投票前最後の街頭演説にもありそうだ。麻生氏の演説が人気なのは周知のとおりで、約2万人の聴衆が集まったが、今回は「脇役」であるはずの応援弁士がヒートアップ。動画がユーチューブなどに公開され、反響を呼んでいるのだ。

   例えば、「行列のできる法律相談所」で有名な北村晴男弁護士が

「この総裁選で麻生太郎が簡単に負けるようであれば、明日から自民党の悪口を言い続けるんだ!こんな国会議員はみんなやめちまえ!」

と煽ったかと思えば、推薦人の中川昭一衆院議員(伊吹派)は

「ゲートインした瞬間に勝負が決まっちゃう。なんか変じゃありませんか? (聴衆からは「変だー!」などの声)」

と、庶民感情に訴える演説を行った。

   両氏の演説は「ユーチューブ」に公開され、特に北村弁護士の動画は3万5,000回以上再生されるという人気ぶりだ。中川氏の演説も、自身の公式ウェブサイトにも全文が掲載され、いつでも閲覧できるようになっている。

   公職選挙法の制約を受けない総裁選なだけに、通常の選挙よりも多くの「政見」が一般市民に露出し、ネット上での盛り上がりを加速させた面はありそうだ。

   麻生氏を押す声で盛り上がったネットコミュニティーだが、ネット上に「福田ファン」は皆無という訳ではなく、ミクシィの「福田康夫コミュ」では、首相就任を祝う声で盛り上がりを見せている。