考えようによっては特撮ヒーローのタイトルみたいだと言えなくもない。メイドガイを背景で処理しているところに表紙デザイナーの苦心が垣間見える。

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アキバを歩けばメイドにあたるというほど一般化し、アースカラーあふれる電脳街で目の保養となっているメイドさんですが、昨今の物騒な世の中ではメイドさんを狙った犯罪が後を絶たないそうです。そんななか、増加する犯罪を防止するため、警察と千代田区が一体となって"メイドさんを守る会"を発足しました。正式には「秋葉原地区メイドカフェ等防犯連絡会」というらしいですが、行政がメイドさん保護に乗り出した画期的な例ではないでしょうか。

エプロンドレスを身にまとい、ご主人さまのために心から奉仕する(妄想中)。心から愛すべきメイドさんたちは、漫画界にも多大なる影響を与えています。今回は、そんなメイドさん漫画のなかでも、個性の強い変わりダネと、王道を行く2本を紹介してみます。

■『仮面のメイドガイ』作:赤衣丸歩郎/発行:角川書店

表紙は一般人(非アキバ系)が手にするには、なかなかハードルの高い仕上がり。この作品の主人公「富士原なえか」は高校2年生の剣道少女で、財閥の財産継承権を得る資格を持っています。彼女はそのことが原因で、謎の敵に命を狙われる危険を背負います。祖父である財閥総帥は可愛い孫の身を案じ、身辺警護のために2名のメイドを送り込むというところから、物語は始まります。

1人目のメイド「フブキ」は、美人で巨乳で薬物&毒物のエキスパート(後にドジっ娘属性が判明)。メイドとしての腕は超一流で、見るも無惨なゴミ御殿だったなえかの自宅を見事にクリーンナップしたりします。まあ、ここまではいいでしょう。

2人目のメイドガイ(男)がとにかく大問題(名前は「コガラシ」)なのです。メイド姿+変態仮面+筋骨隆々+異常性格という、何から何まで間違いだらけ。この異常センスな人材登用は、戦国武将が大好きな孫に対する祖父の心遣いだったのですが、当のなえかはメイドガイを見るなり「な、なんですかおじい様っ。なんですかこの変質者は?」と半泣きに(当然)。

初対面であからさまに拒絶されているのに、メイドガイは「ククク……この俺を選ぶとはいい度胸だご主人。気に入ったぞ。オハヨウからオヤスミまでキッチリご奉仕してやるから覚悟するがいい(不適な笑い)」と、空気を微塵も読まずにメイド奉仕宣言! 彼はご主人・なえかのために、特殊な眼力でスリーサイズを言い当てたり(健康管理)、勝手にストーキングしたり(身辺警護)、イモリの尻尾とかでドーピングの薬を調合したり(学力アップ)とやりたい放題。ご主人に降り掛かるトラブルを新たなトラブルで強引に封じ込めるという、常人には理解できない行動を取り続けます。

メイドガイは一応主人公のひとりのはずなんですが、実際はご主人に叱られる不遇な日々を送っているので、純然たる主役という感じではありません。同僚メイドのフブキにも、時折釘バットでタコ殴りとか、バーベキューの串で串刺しとか、無理矢理反省を強要されるというヒドい扱いです(ギャグ漫画でなかったらとっくにあの世行き)。それでも不死身のメイドガイは喜々として任務をこなすのですから、これはもう真性のマゾヒスト。なんというか、実に読者を選ぶ漫画なような気がしてきました。

これは1巻の裏表紙。各巻の裏表紙には収録話の1コマが掲載されている。ちなみになえかの弟と祖父はメイド萌えで趣味が共通している。3巻の裏表紙。「おまえのそれは無駄乳か!!」という名言が心に染みる。巨乳だからこそ寄せて集めて持ち上げよ!というポリシーに脱帽。


一応物語には、莫大な財産の相続権をめぐるサスペンス的な伏線(なえかの両親が行方不明等)もあるのですが、基本的にギャグ漫画なので、その辺の設定は正直どうでもいい扱いになってます(ある意味漢らしい)。本筋には全く関係のない銀行強盗の話とか、宇宙人が登場する話などが、前振りもなく投入されているのですから推して知るべしです。

あと特筆すべきは、作者の巨乳へのこだわりぶりでしょう。特に3巻収録の「ご奉仕十三」は、全員Dカップ以上のホルスタイン(原文ママ)なミニスカメイドが働くケーキ屋が舞台。その店の影響で、なえかの友達のバイト先(ケーキ屋)が大ピンチとなり、メイドガイをヘルプのパティシエとして呼ぶという、もはや何がなんだかわからない話になっています。作中では、巨乳な女店長が乳ビンタをしたり、巨乳アピールのノウハウを熱く語ったり、巨乳メイドの時給が1800円だったりと、作者の巨乳への想いが暴走しまくり。

とにかくこの作品は非常に漫画的な漫画なので、理解してもらうには一度読んでもらうしかないでしょう。いい意味で非常に頭が悪く、萌え&ハイテンションなギャグ漫画なので、巨乳とメイドと変態に興味がある人(?)なら読んで損はないんじゃないでしょうか。
※ただしシャレの分からないお子様には不向きです(ご注意ください)。