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外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

○【ドル/円 4月の推移】

4月のドル/円相場は110.780〜112.402円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.6%上昇(ドル高・円安)した。値動きは1円60銭ほどにとどまり、月間の値幅としては2014年6月以来の小ささとなった。

米国や中国の景気に対する不安心理が後退する中、世界的に株価が堅調に推移したことが円安の流れを支えた。米中通商協議が継続して行われ、5月にも合意が成立する可能性があるとの見方も安心材料となった。

もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ、欧州中銀(ECB)や豪中銀(RBA)など、世界の中央銀行の多くが、引締めに慎重姿勢を示す「ハト派」へ転じたことから、米2年債利回りが低下しており、これがドルの上値を抑えた。

ドル/円相場は、24日に112.402円まで上昇して年初来高値を更新したが、その後は伸び悩んだ。なお、15-16日に行われた日米貿易協議の初会合を円高要因として警戒する向きもあったが、特段の手掛り材料になることはなかった。

○【ドル/円 5月の見通し】

ドル/円相場は小幅な値動きが続いている。4月は1.6円程度の値幅にとどまったが、3月も2.4円程度しか動かなかった。ここまで2カ月以上にわたり、109.50〜112.50円を上下どちらにも抜けられないでいる。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が「辛抱強さ」を強調して様子見姿勢を示す一方、日銀は「粘り強く緩和を維持する」方針をくり返し表明しており、日米の金融政策がいずれも当面動きそうにないことが、ドル/円相場膠着の大きな要因と見られる。そうした見方に沿えば、ドル/円相場は5月も膠着しやすいと考えられる。

1日にはFOMCの政策金利発表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見が予定されているが、「辛抱強い」姿勢を修正する公算は小さいだろう。ただ、トランプ米大統領がFRBに対し利下げと債券買入れの再開を求めたこと(4月30日にツイッターへ投稿)も影響しているのかもしれないが、市場には依然として年内の米利下げ観測がくすぶっている(米金利先物市場が織り込む12月までの利下げ確率は4月末時点で60%台)。

やや過剰とも思える足元の利下げ観測は、どちらかといえばドル買いを促しやすいと見るべきだろう。また、短期ゾーンから長期ゾーンまで幅広い年限で2.0〜2.5%前後の日米金利差が維持されていることも、どちらかといえばドル買い・円売りを促しやすいと考えられる。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya