「返り咲いたJ1でも“威風堂々”と。大分トリニータの序盤戦を振り返る」

写真拡大

その戦いぶりを一言で表現するなら、「威風堂々」がふさわしい。

6年ぶりにJ1の舞台へ返り咲いた大分トリニータは、10試合を終えて3位と目下躍進中。J3を戦っていた3年前から徐々にチーム力を高め、たどり着いたJ1でもまったく動じず、イレブンは冷静に試合を進めて勝点を奪っている。

今回の当コラムでは、堂々と戦う大分をピックアップ。指揮官の采配や際立つストライカーの活躍などチームの特長を述べていきたい。

基本形は3-4-2-1

上図が今季の基本システムだ。守護神は高木駿で、最終ラインは右から積極的にオーバーラップを仕掛ける岩田智輝、鈴木義宜、福森直也という組み合わせ。

ダブルボランチは前田凌佑とバランス感覚に優れた島川俊郎が務め、ウイングバックは右に松本怜、左は高山薫を軸に三竿雄斗、星雄次が起用されている。多士済々の前線はシャドーにオナイウ阿道と小塚和季、1トップにはエースへと成長した藤本憲明が入る。

冴えわたる指揮官の采配

躍進するチームを構築し、日々成長させている立役者は、就任4年目を迎えた片野坂知宏監督だ。

ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌)に影響を受けた指揮官が標榜するのは、最終ラインからのパスワークをベースとした攻撃的なサッカー。ビルドアップで特筆すべきは、GK高木のポジショニングである。リベロの鈴木と同じ位置まで移動してパス回しに関与し、時にハーフウェーライン付近まで進出することもあるのだ。

ビルドアップのパターンは2つあり、ボランチの島川が最終ラインに落ちて4バックを形成。そこに高木も加わり、「5-1-5」という形でポゼッションをする。あるいはダブルボランチはそのままに、3バック+高木でボールを回す「4-2-5」という形だ。

相手のプレスや布陣に応じてビルドアップの形を変えることで、相手を惑わせることができている。

そして、選手起用にも指揮官の色が出ている。昨季の中盤戦から終盤戦にかけて那須川将大(現・松本山雅)、國分伸太郎(現・ギラヴァンツ北九州)、前田ら出場機会に恵まれていなかった選手たちを次々に抜擢してチームに変化をもたらしたように、メンバー全員を戦力として計算し、チーム力に昇華させる手腕は素晴らしい。

今季もヴァンフォーレ甲府から獲得した島川が7節のベガルタ仙台戦からポジションを掴んでおり、タイミングを見た用兵は健在。シーズンが進むにつれ、どのようにスタメンが変化していくか注目だ。

今後も攻撃陣が牽引できれば

指揮官の手腕とともに際立っているのが、好調を維持するストライカーたちだ。

いまや不動のエースへと成長した藤本は、ここまで得点ランク3位となる6ゴールを挙げる活躍でチームを牽引。鹿児島ユナイテッド時代には2季連続でJ3の得点王に輝き、加入1年目の昨季は12ゴールを挙げるなど進歩著しいストライカーは、初となるJ1の舞台でも自身の力を証明中だ。

シャドーのポジションに定着したオナイウも上り調子だ。ここ4試合で3ゴールと量産体制に入った背番号45は、恵まれた体躯を活かした力強いプレーが持ち味。藤本とは違った武器を活かし、2桁得点を達成できるか。

攻撃陣にはほかにも後藤優介、三平和司、馬場賢治、伊藤涼太郎ら豊富なタレントが顔を揃える。彼らがポテンシャルを発揮できれば、シーズン終盤でも得点力は落ちないはず。特に2016年、2017年と2年連続でチーム内得点王だった後藤の得点感覚は素晴らしいものがある。より一層の奮起に期待したい。

2019/5/5 written by ロッシ