31年続いた定番商品が姿を消す(写真:エースコックのプレスリリースより)

エースコックは3月25日、1988年から続く「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」の販売を終了すると発表した。3月末の生産で打ち切り、30年以上の歴史に幕を閉じる格好だ。1990年代にはあのSMAPをテレビCMのキャラクターに起用し話題となったこともある。平成の終わりとともに、長らく愛された商品がまた1つ消えていく。

しかしそれにしても、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」を私はカップ焼きそばのド定番と思っていたものだが、生産中止に至るほどだったのだろうか。

そこで、今回はカップ麺の、さらに焼きそばカテゴリーについて、商品ごとの売れ行きを調べてみた。5000万人規模の消費者購買情報を基にした、True Dataのデータベース、ドルフィンアイを使って、主要な全国のスーパーマーケットのPOSデータを基に、カップ麺の売れ行きを抽出した。

なお、使用した買い物指数は、100万人がスーパーマーケットに入店したとして、その100万人単位における売り上げを指す。

抽出方法は、まずカップ麺のデータベースから、「やきそば」「焼そば」「焼きそば」の単語が付いている商品を一覧化したものだ。なおグラム数の違いはあるものの、それを考慮すると統一した表にはなりえないので、その点だけご容赦いただきたい。

まず、100万人がスーパーマーケットに入店したとして、その100万人単位における売り上げや平均単価も調べ、ブランド・商品別にランキングにした。


1位は「日清焼きそばU.F.O 128g」(日清食品)、2位には「マルちゃん ごつ盛り ソース焼きそば 171g」(東洋水産)、3位に「ペヤング ソースやきそば120g」(まるか食品)、4位に「一平ちゃん 夜店の焼そば 135g」(明星食品)が続く。そして、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」は買い物指数のランキングでは、いまだに10位に顔を出している。だから、焼きそばのなかで定番というのは、あながち間違っていない。

ただ、ここで注意したいのは、上位と下位では、大きくポイントに差がついていることだ。

「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」は「日清焼そばU.F.O. 128g」に10倍ほどの差をつけられている。カップ焼きそばは、「日清焼そばU.F.O. 128g」「マルちゃん ごつ盛り ソース焼そば 171g」「ペヤング ソースやきそば 120g」「一平ちゃん 夜店の焼そば 135g」が“4強”であり、そのほかは、なかなか苦戦を強いられている状況だ。

本記事の担当編集者が3月29日と30日の2日間で、東京都内のスーパーを10軒回ってみたところ、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」を1つも見つけられなかった。撤退を見据えた生産・出荷調整を進めていたからかもしれないが、確かにどのスーパーも“4強”の商品が目立ち、5位以下は店によって置いているブランドがマチマチだった。POSデータを持ち合わせていないが、コンビニエンスストアでも「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」は見る影もなかった。

強者の強みが価格に反映される

ここで面白いデータを2つお見せしたい。まずは、どちらの商品が季節に乗れているかを示すグラフだ。基本的に焼きそばは夏の食べ物だとされる。夏祭りや、あるいは、ビーチ、花火会場などでビールとともに食する経験は多いだろう。その時期に合致した売れ行きを示しているか見てみよう。比較は、ランキング1位の「日清焼そばU.F.O. 128g」と、今回販売終了する「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」だ。


1店当たり売り上げ点数を、この1年間にさかのぼってみると、
「日清焼そばU.F.O. 128g」はカップ焼きそばの顔ともいえる存在のためか、夏時期の販売量がグンと伸びているのがわかる。それにたいして、あくまでもこの1年のデータではあるものの、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」の売上点数はやや寂しい。

そして、2つ目のデータは、消費者にいくらの金額で訴求できるかだ。当然ながら、小売店としては定番品であれば安定した価格で販売したい。そうすると売り上げが上下することがない。また販促のために、無理な値下げも回避できる。


そこで、スーパーマーケットで販売された、月あたりの平均売価の推移を見てみると、今度は動きの激しさが逆になっている。「日清焼そばU.F.O. 128g」は安定した価格で販売できているとわかる。一方で、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」については、90円台から130円台と、その変動が激しい。これは在庫がたまったときにセールで売る、というようなことがあるのかもしれない。

もともと、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」は、カップ麺でお腹がいっぱいになりたい消費者に訴求するために、文字どおり「大盛り」をネーミングした。

しかし、メタボ回避、ダイエット、少子高齢化、炭水化物・糖質抜きブームなどが重なり、さほど大盛りがアピールできない時代になってきたように思う。もちろん、好きな人はいるだろうが、その比率が下がっているという意味だ。

売れ筋商品から外れると、棚を取れない?

POSデータに基づく商品管理が進み、スーパーやコンビニの店頭は売れ筋商品をを重視して並べる。一度、棚を外れてしまうとなかなか取り戻せず、売れ行きが下降する。そんな悪循環があった可能性もある。

なお、今回、調査した限りでは、カップ焼きそばの中で、買い物指数(100万人来店時の売上金額)が、なんと数百円にすぎない商品も数多かった。これでは、スーパーマーケットに並べるコストは徒労と化していく。きっと土地代を考えると陳列コストのほうが高いだろう。また、平均売価も数十円しか取れない商品も数多くある。

そんななかで、「スーパーカップ 大盛りいか焼そば 167g」は健闘を続けていた商品とはいえる。まさか平成の終わりを意識したわけではないだろうが、一つの区切りとして、私も愛好したカップ麺が寂しい結末を迎えることになった。