日本を席巻する外国人騎手はなぜ強い?

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 いまやクラシックのトライアルが真っ盛り。“本番”に向けて有力騎手の騎乗馬も決まりつつある。外国人騎手も珍しくなくなった。『週刊ポスト』での角居勝彦調教師による連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、お届けする。

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 2018年のリーディングジョッキーは215勝のC・ルメール、2位も153勝でM・デムーロ。さらに短期免許で来日していたJ・モレイラ騎手は勝率3割5分、連対率5割という驚異的な数字を残しました。

 外国人ジョッキーの活躍を抜きにして、今の競馬は語れません。角居厩舎でも昨年、一昨年とも勝ち頭はデムーロ騎手でした。

 確かな技術で勝ちきってくれるため、馬主さんは自分の馬に彼らを乗せたがります。厩舎としても、馬のポテンシャルを最大限に発揮してくれる期待もあって頼もしい。彼らの乗る馬は人気が上がる傾向にあるので、ファンの方の馬券検討も外国人ジョッキーが中心となるのでしょう。人気馬だけでなく、人気薄の馬を上位に持ってくることもめずらしくありません。

 なぜ、そんなに勝てるのか? 豊富な騎乗経験による引き出しの多さ、特に下半身の筋力の強さ、そして勝負どころを逃さない感性など、外国人ジョッキーの特長は以前にも書きました。

 それ以外に「外国人ジョッキーは日本の競馬が好き」ということがあると思います。

 ヨーロッパやオーストラリアなどのトップジョッキーにとって、日本の競馬は魅力に溢れている。馬場がいい。賞金もいい。馬に関わる人もいい(笑い)。なにより、競馬が面白いのです。

 日本の競馬は出走頭数が比較的多く(もちろん少頭数のレースもありますが)、ジョッキーの技術が発揮できる。仕掛けて、下馬評をひっくり返す楽しみがある。たとえばフランスの7頭立てのレースなどは、まぎれがなく、たいてい人気通りに決まります。腕の見せどころがなく、ジョッキーにとって面白くないのではないでしょうか。

 そういった日本の競馬の評判はルメールやデムーロなどの口コミで世界中に拡がります。

 ただし、日本の競馬は出稼ぎ気分で稼げるほど甘くもない。外国人ジョッキーは相当な努力をしています。

 向こうの競馬にはないシステム、たとえば調整ルームに閉じこもる点。彼らにとっては煩雑かと思いきや、そうでもない。彼らは進んでモチベーションの維持に役立てている。調整ルームでは過去のレースビデオを観ることができます。そこで彼らなりに策を練る。自分の乗る馬の特徴はもちろん、相手関係の情報まで頭に叩き込む。どこをどう観ているのか、そのへんは彼らの感性なので分かりませんが。

 才能や腕っ節の強さで勝っているように見えて、彼らはとても勉強熱心です。実は、そういう姿勢こそが陣営から歓迎されるのです。

 日本人ジョッキーも負けてはいられませんね。真摯な姿勢をお手本にすべきです。彼らに勝ち鞍をさらわれるとネガティブにとらえるのではなく、向こうからわざわざ来てくれた最高の見本だと思ってほしい。

 ただしこれほどまでに突出している外国人ジョッキーですが、実は“ゲームメイカー”ではありません。レースを作るのは日本人ジョッキー。ではなぜルメールやデムーロはあれほど勝ち鞍を増やせるのでしょうか。

●すみい・かつひこ 1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後18年で中央G犠〕数24は歴代3位、現役では2位。2017年には13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館)が好評発売中。2021年2月で引退することを発表している。

※週刊ポスト2019年3月22日号