「Mr.ビーンを演じるローワン・アトキンソンはコメディーを体で表現する天才である」といえる理由とは?
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ローワン・アトキンソンはイギリスを代表するコメディアンで、特に「Mr.ビーン」で知られています。Mr.ビーンはほとんど会話をすることなく、その表情や動作のみで人を笑わせるキャラクターです。多くのムービーエッセイをアップするNerdwriter1は、ローワン・アトキンソンは体を使ってコメディーを演じる「フィジカルコメディー」の天才であり、そのスタイルは他のコメディアンには決してまねすることができないと論じています。
2012年にロンドン五輪が開催されました。
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開会式の第二部で、サー・サイモン・ラトル指揮によるロンドン交響楽団がヴァンゲリスの「炎のランナー」を演奏しますが、曲の冒頭で流れるシンセサイザーの奏者として、Mr.ビーンが登場。
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同じ音のキーを連打するだけの退屈な演奏に、Mr.ビーンは早くもうんざりした表情を浮かべていて、会場は爆笑につつまれます。
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ローワン・アトキンソンはオックスフォード大学で理学修士として通いながら、大学の演劇サークルやコメディサークルで活動していました。
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カメラに向かっておちゃめな笑顔を見せながら街を歩くアトキンソンですが……
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カメラに夢中になるあまり、街路樹に激突してしまいます。
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この街路樹にぶつかるスケッチ(コント)もこの番組で放映されたものは1979年からBBCで放映されていた「Not the Nine O'Clock News(9時のニュースではありません)」という番組。ローワン・アトキンソンがコメディアンとして有名になったのは、この番組がきっかけです。
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街路樹にぶつかるスケッチでアトキンソンが演じているキャラクターは「カメラに向かってかっこつける自意識の強い男性」です。
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アトキンソンは体で演じるコメディーである「フィジカル・コメディー」の達人だとムービーで評されています。「フィジカル・コメディアン」といえば、喜劇王と呼ばれたチャールズ・チャップリンが有名です。
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フィジカル・コメディアンとしては他にもバスター・キートンが有名です。チャップリンやキートンは言葉を用いず、コミカルなキャラクターになりきる天才でした。フィジカルコメディーは体を使って面白いことをするだけではなく、キャラクターの振る舞いをカメラの前ではっきりと示すことが必要になります。
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アトキンソンは「私はジョークそのものよりも演技や振る舞いに重きを置いています。私が笑うのは、ある種の真実を示してくれるようなキャラクターです。たとえキャラクターが変だったり、、滑稽だったり、いかれていたり、無礼だったり、ばかげていたりしても、その裏には一種の真実が隠れているのです」とインタビューで語っています。
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アトキンソンの当たり役といえば「Mr.ビーン」です。
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Mr.ビーンは、無声映画時代に喜劇王として活躍したチャップリンと同じように、言葉をほとんど話すことない道化役です。
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Mr.ビーンは、もともとは1990年から1995年までITVで放映されていたコメディー番組で、6年間で制作されたテレビ版はわずか15エピソードのみ。Mr.ビーンがイギリス外でも有名になったのは、劇場版の「ビーン」がきっかけといわれています。劇場版では、自ら監督・製作も務めたチャップリンやキートンと異なり、アトキンソンは演者としての立場を徹底しています。
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Mr.ビーンだけではなく、アトキンソンの名演技はステージショーで見ることができます。彼のショーには無駄がなく、アトキンソンの才能がここぞとばかりに発揮されます。以下のアトキンソンがライブのステージショーで演じたスケッチの1つ。
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以下のスケッチは教師が下ネタ満載な生徒の名前を読み上げるというジョークです。教師は単に生徒の名前を呼んでいるだけなので至って真面目であり、動じる姿はありません。
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もちろんアトキンソンが話すジョークも面白いのですが、それ以上に彼が演じる「厳格な教師」というキャラクターがあってこそスケッチを楽しむことができます。
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教会での結婚式の進め方について、かなりぶっちゃけるようにしゃべる牧師。
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話の途中で、教会の儀式で使う聖なるパンを聖なるワインへ乱暴に浸してむしゃむしゃと食べ出してしまう様子に、観客は大爆笑。このスケッチも、アトキンソンが「親切そうな牧師」を完璧に演じているから成立しているというわけ。
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アトキンソンの場合、キャラクターそのものがジョークとして成立しているといえます。
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アトキンソンが見せるコメディーは、ギャグのコメディーというよりもむしろ「人格のコメディー」です。アトキンソンは単におもしろいことをしているのではなく、普通のことをおかしくやってみせるのです。
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例えば以下のスケッチは、「オーディションで指示通りに演技をする」という内容です。1つ目は「王様の下にいい知らせを持ってきた伝令」の演技。
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2つ目は「悪い知らせを持ってきた伝令」の演技。
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3つ目は「いい知らせだと思って持ってきたら実は悪い知らせを持ってきていた伝令」の演技です。
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演技はヒートアップし、「いい知らせだと思って持ってきたら悪い知らせだったのでその場で刺されてしまったのかその場で死んでしまう伝令」の演技にさしかかり、会場は笑いにつつまれます。
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最後にアトキンソンは「演技に熱が入りすぎて、地面に膝をついた時に足を痛めてしまう俳優」まで演じ切ります。ここまで5つの振る舞いがショーで披露されましたが、ジョークをしゃべるわけではなく、「真剣にオーディションを受ける俳優」というキャラクターで笑いを生まれています。
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このように観客の心をわしづかみにするようなコメディーを表現するためには、ものすごい精度の演技が求められます。アトキンソンの笑いのスタイルは誰にもまねできないもので、完全にアトキンソン独自のものといえます。
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フィジカル・コメディアンは人間の行動をつぶさに観察し、ちょっとした動きから言葉の発音に至るまで完璧にものまねをすることで、ある種の皮肉を表現することができます。
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「電車の中である状況や人物に出くわしたとします。私はこっそりその人を観察し続けます。それから綿密にスケッチのキャラクターへ仕上げていき、自分をそのキャラクターに見せるようにするのです」とアトキンソンはインタビューで語っていました。
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なお、Mr.ビーンは公式チャンネルによってアップロードされていて、アニメや映画を含めた全エピソードを無料で見ることができます。
Mr. Bean | Episode 1 | Mr. Bean Official - YouTube