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昨日の億万長者が、明日には全財産を溶かす――ビットコインの真骨頂は、爆騰したと思った次の瞬間には暴落する値動きの激しさ。そんなジェットコースター乗客たちの歓声と悲鳴をお届けしよう。

上がりすぎて怖くなった

IT企業に勤める浅野隆氏(仮名、43歳)は、3万円で始めたビットコイン投資で約800万円の利益を稼ぎ出した。

浅野氏がはじめてビットコインを購入したのは'16年7月ごろ。きっかけは些細なものだった。

浅野氏が言う。

「この時期、私の周囲でFX(外国為替証拠金取引)をしている人たちの間で、仮想通貨であるビットコインに投資をする人が急増していたんです。

聞くと、当時は中国で人民元安が進んでいたことを受けて、中国人がビットコイン投資に殺到。欧州でもイギリスのEU離脱懸念が急浮上して金融市場が動揺し、欧米の投資家たちがビットコインの買いに走っていたんです。

実際、この時期にビットコインは1ヵ月で1.5倍に急騰。そのすさまじい値上がりに乗らない手はないということで、気付いた人から動き出していた。

そこで、私も軽い気持ちで3万円から投資をしてみることにしたんです。当時は1BTC=6万円(BTCはビットコインの通貨単位)ほどだったので、約0.5BTC購入できました」

これが大当たりだった。

ちょうど同じころ、アメリカ最大の仮想通貨取引所とメガバンクの三菱東京UFJ銀行が資本業務提携を発表し、ビットコインブームはヒートアップ。

さらに、'17年4月に改正資金決済法が施行されて、仮想通貨の取引所が金融庁への登録制になるなど環境整備が進むと、投資マネーが本格的にビットコインへ流れ込んでいった。

おのずとビットコイン価格は右肩上がりの曲線を描いて急上昇し、'17年5月には30万円台を突破。浅野氏の購入時より、5倍超に急騰した。

「これはすごいブームが来たと思って、'17年に入ると買い増していきました。そのときは1BTC=10万円台で仕込みましたが、そこから毎日1万円ずつ上がるほどの急騰劇で、あれよあれよと儲けが膨らんでいったのです。

単純に嬉しかったですが、こんなことがあっていいのかと怖くなることもありました。

11月に100万円を超えるとメディアでもその過熱ぶりが大きく報道されるようになり、さらにマネーがなだれ込んだ。

100万円超えから2週間足らずで200万円を突破したときはさすがに『バブルが破裂する!』と恐ろしくなり、12月に手持ちをすべて手放すことにしました。途中で買い増した分も合わせて利益確定させると、最終的に800万円もの利益になりました」

資産3億円を築いた男

年始から乱高下するビットコイン市場だが、まずは成功者の声を聞こう。

昨年からビットコイン投資を始めた個人投資家は、「1ヵ月で数百万円稼ぎました」と言う。

「ビットコイン投資が株式投資と違うのは、1日のあいだに価格が何十万円も大きく動くこと。1BTCを買ってその日に売るだけで、1日に20万円、30万円と儲けられるんです。私の場合、うまくいったときは1日で500万円儲かりました」

そもそもビットコインとは、インターネット上でやり取りする「仮想通貨」の一種。

通常、通貨は国や中央銀行が発行・管理するが、仮想通貨には管理主体が存在しないのが最大の特徴。「ブロックチェーン」という最新技術を使うことでそれを可能にし、決済などにかかるコストが破格に安く済む。

しかも、パソコンやスマホさえあれば国境を越えて世界中の人とそのおカネをやり取りできるため、「次世代通貨」として急速に注目を集めている。金融ジャーナリストの田茂井治氏が言う。

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「そんなビットコイン市場のさらなる拡大を見込んで、昨年から投資する動きが爆発的に広がっています。特に、いままでFXをやっていた個人投資家たちがビットコイン投資になだれ込み、1億円超えの資産を築いた成功者たちが続々と出ている。

ブームはビットコインだけではなく、ほかの仮想通貨への投資で大儲けしている人も急増。ビットコイン以外ではイーサリアム、リップルという仮想通貨が人気で、ビットコインと同じく価格が急騰しました」

FX投資家だった斉藤祐司氏(仮名、47歳)もそんなイーサリアムへの投資で「資産3億円」を築いた一人。本人が言う。

「私はFXの投資家でしたが、'16年ごろから投資家仲間の間で仮想通貨の話題が増えたので、やってみることにしました。目を付けたのが、イーサリアム。私が研究したところ、イーサリアムはビットコインの技術的欠点を克服しており、将来的に仮想通貨の中心的存在になると思ったからです。

当時は1ETH(イーサリアムの通貨単位)が約1200円で約100万円を投資したのですが、3ヵ月で2倍の2400円にまで上昇した。ここでいったん利益確定して、いきなり100万円ほどの儲けになりました」

しかし、「これは失敗だった」と斉藤氏は言う。

「私が手放したのは'17年3月だったのですが、その3月中に価格はさらに上昇し、月末には5000円を突破したんです。

その後も勢いが衰えることなく上がり続けたので、これまでのFXの投資経験から『この勢いはホンモノだ』と思い、4月に一気に1500万円を投資しました。

そこからはもう、上昇相場に身を任せるだけ。あれよあれよと上がる相場に乗って、年明けには1ETH=15万円を超える高値を付けました。じつに購入時から20倍以上になり、年始に資産が3億円に達したわけです」

このような億万長者が日本全国で次々に誕生しているのだから、それなら自分も、と人々が殺到。それがまた仮想通貨の価格を引き上げる「熱狂相場」になっているわけだ。

私はこうして資産を失った

そもそも、仮想通貨投資は難しいと考えている人は多いが、じつはとても簡単。売買をする仮想通貨取引所に入出金などのためのアカウント(口座)を作りさえすれば、取引はすぐにできる。

「株と違って、低額から投資できるのも特徴です。ビットコインには最低取引単位があって、取引所毎に違いますが、たとえば0.001BTCならば、取引価格が150万円に対して1500円から投資できる。しかも、仮想通貨は24時間365日取引ができる」(フィスコデジタルアセットグループ代表の田代昌之氏)

売買手数料は取引所によって違うが、0.01%などと低いうえ、「ゼロ」のところもある。

株式投資とくらべて簡単で低コストなうえリターンも大きいとなれば、まさにいいこと尽くめの投資先ということになるが、当然おいしい話には必ず「裏」があるもの。ビットコイン投資には、とんでもないリスクがあることも忘れてはいけない。

「そもそも、預金のように元本の保証はありません。そのため、運用に失敗すれば資産が大きくマイナスになる可能性が十分にある。

しかも、仮想通貨は値動きがとても大きく、そのスピードもとてつもなく速い。1日に数十万円動くこともザラで、それだけリターンを稼げる可能性がある一方、逆に大きな損を被るリスクもある」(前出・田代氏)

金融関連企業に勤める藤原健太氏(仮名、42歳)はまさにそんなリスクに直面し、「資産喪失」という地獄を体験した。

「私がビットコインに投資をしたのは昨年12月のことで、最初はうまくいっていたんです。1BTC=200万円あたりで購入したところ、その日のうちにいきなり230万円まで上がった。

元手300万円に対して10倍の3000万円分投資ができるレバレッジ取引で購入していたので、このときはわずか数時間で100万円以上の利益が出ました」

藤原氏は、「こんな大相場があるのか」と浮かれたというが、そんな喜びの時間もつかの間だった。藤原氏が続ける。

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「ビットコイン価格がそこから2日ほどで、150万円まで一気に暴落したんです。これには青ざめました。

なぜならレバレッジ取引では、一定以上の価格急落時に取引所から保有しているビットコインを強制売却されるのですが、これに引っかかってしまった。これで大損が確定したのです。

私の場合、このときに熱くなってしまい、さらにビットコインを購入したのが運のつき。12月22日には再びビットコインが急落。そこで元手にしていた300万円はすべて消えました」

価格下落の「予兆」を察知できていれば、藤原氏のような資産消滅の危機を回避できたのではないか。そう考える向きもあるだろうが、じつはそれはほぼ不可能。

というのも、ビットコインの価格には「根拠」がないので、どんな価格になるのかがまったく読めないからだ。元日本銀行Fintechセンター長で、京都大学公共政策大学院教授の岩下直行氏が言う。

「たとえば株なら配当や株主優待が受けられるなど、所有するメリットがある。債券も同じで金利がつくし、満期にはおカネが返ってくる。

しかし、ビットコインにはそういうものがないので、理論価格は『ゼロ』。つまり、仮想通貨がここまで値上がりしたこと自体が異常なことだし、まさにバブル。どんな些細なきっかけで、いつ弾けてもおかしくない」

言い方を換えれば、ビットコイン相場は、みなが上がると思っているときは買われ、買われるから上がる。しかし、これがいったん逆方向に動き出せば、今度は逆回転を始める。最悪の場合、その価格はゼロまで落ちる可能性があるのだ。

爆騰も暴落も突然起きる

当然、すでに前出の藤原氏のような「被害者」も続出している。

「仮想通貨は寝ている間に暴落することもあり、とにかく気が気でない。私はイーサリアムへの投資で儲けていましたが、1月16日に突然暴落劇が起きて、対応できなかった。この1日で100万円を失いました」(都内在住、24歳の個人投資家)

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じつはビットコインをめぐっては、ほんの一部のプレイヤーが全体を牛耳っているという「不都合な真実」もある。『アフター・ビットコイン』著者で麗澤大学経済学部教授の中島真志氏が言う。

「ビットコインのユーザーは世界で1600万人といわれていますが、保有者の分布データを詳細に分析してみると、上位1%ほどのプレイヤーが全体の9割のビットコインを保有していることがわかります。

しかも、ビットコインの新規発行であるマイニング(採掘)という作業も、中国の採掘集団が7割以上を寡占している。ビットコインの中心的な開発者の一人であるマイク・ハーン氏も、『ビットコインはほんの一握りの人に管理されている』と指摘している」

つまり、そんな「一握り」のさじ加減ひとつで、価格が左右される恐れがある。それでは胴元のいるギャンブルといったいなにが違うのか……。

「投資初心者の方が仮想通貨投資をやる場合は、はじめに金額の限度額を設定して始めたほうがいい。金融資産の10%以内などにしておくのが賢明でしょう」(前出・田代氏)

表もあれば、裏もある――。仮想通貨に手を出す人は肝に銘じておいたほうがいい。

「週刊現代」2018年2月3日号より