防犯カメラに映った犯人と思われる映像

「(射殺された)楠本組員は、任侠山口組の織田代表に心酔し、一度やめた極道の世界に戻ってきたばかりだった。戻ってわずか4カ月。自ら志願して織田代表の警護についた。犯人が銃を構えたところに向かって飛び込んで撃たれた。今どきあんな男はいない」

 任侠山口組に詳しい経営者はそう話し、楠本勇浩さん(44)の死を悼んだ。

 9月12日、神戸市長田区の路上で、織田絆誠代表(50)を狙った襲撃事件が起こった。代表を乗せた車に犯人の乗用車が衝突し、降りてきた犯人が発砲。楠本さんは織田代表を守ろうと犯人に立ち向かっていき、射殺された。実行犯グループの車のナンバープレートは偽造されたもの。周到な計画性が見られた。逃走している犯人は3人、うち一人はマシンガンも所持していたという。

「楠本組員が飛び込んで撃たれたのを見て、別の襲撃部隊員はひるんで逃げた。現場はアパートの真下で近くに小学校もある。マシンガンなんて撃ったら、織田代表がハチの巣になるだけじゃすまない。一般市民を巻き込んだ大惨事になっていたはずだ」

 と任侠山口組関係者は激怒する。兵庫県警は、神戸山口組最大組織である山健組に所属していた組員・菱川龍己容疑者を指名手配した。

 暴力団に詳しいジャーナリストも同様の見方をしていた。

「8月に任侠山口組が会見を開いて、神戸山口組・井上組長の組の運営や結成のいきさつに対して辛辣な批判をしていました。そのことに腹を立てた神戸山口組傘下の組員が実行した可能性は高い。ただ、犯行は用意周到におこなわれており、組織立ってかなりの人数が関わっているはずです」

 井上邦雄組長(69)らが六代目山口組から分裂して神戸山口組を結成したのは2015年8月のことだ。さらに2017年の4月には、 “神戸山口組の悪政を見かねた” という記者会見を開いて織田代表らが離脱し、任侠山口組を結成。

 以来、山口組を名乗る三つの組織は冷戦状態が続き、不気味な静けさを保ってきた。それを突き破った今回の事件の衝撃はあまりにも大きい。

 関東在住の暴力団関係者のもとにも、襲撃事件の情報は随時届いていた。

「今回の事件で神戸側が特定抗争指定暴力団に指定されれば、事務所は使えなくなり、事実上神戸山口組は終わる。ヤクザ界全体への取り締まりもいっそう、厳しくなりそうだ」

 襲撃事件の影響を最も受けたのは神戸側だと、前出のジャーナリストはみている。

「実行犯が神戸側だとすると、これまで神戸側は、六代目傘下の組織に幹部を射殺されたこともありましたが、特定抗争指定暴力団に認定されてしまうことをいちばんに恐れていたため、報復をしませんでした。それなのに今回は、神戸側から仕掛けて射殺までした。内部では、なんてことをしてくれたんだという反応をする者も多く、ピリピリした雰囲気になっています」
(週刊FLASH 2017年10月3日号)