脳死状態となり123日後に双子の赤ちゃんを産んだ女性(画像は『Metro 2017年7月11日付「Brain dead mother gives birth to twins after 123 days on life support」(Picture: Caters)』のスクリーンショット)

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愛する夫と2歳の娘、そしてこれから生まれてくる双子の子供たちとの幸せな家庭を夢見ていたであろう21歳の妊婦が、脳卒中で倒れ脳死状態となった。しかし母親の胎内で双子の命は尽きることなく生き続け、今年2月に懸命な医師らの治療とケアにより無事に誕生した。妊婦の脳死から123日後のことであり、医学上前例のない奇跡の誕生となった。英メディア『Mirror』や『Metro』の他、米メディア『Inside Edition』が伝えている。

ブラジルのコンテンダに暮らすフランキーレン=ダ=シルヴァ・ザンポリ=パジーリャさん(Frankielen da Silva Zampoli Padilha、21歳)は昨年10月、仕事へ向かう途中だった夫ムリエルさん(24歳)に電話し「頭痛で死にそうだからすぐに帰って来て」と伝えた。

ムリエルさんは薬を飲むように指示したが、フランキーレンさんは「痛みが激しいの。首の後ろも痛くて倒れそう」と訴えたためすぐに自宅へ引き返した。すると体を震わせながら痛みで嘔吐と眩暈を起こし泣いていた妻を見つけ、車でカンポ・ラルゴにあるノッソ・サンホラ・ド・ロシオ病院へ連れて行った。

フランキーレンさんはこの時、ムリエルさんに「家にはきっと帰れないと思うから覚悟しておいてほしい」と話しており、実際にこれが夫が聞いた妻の最後の言葉となった。その後、意識を失ったフランキーレンさんは複数の検査を受けた結果、脳卒中になり激しい脳内出血を起こしていたことが分かった。治療にあたった医師らはフランキーレンさんが妊娠9週目であることを知ったが、「CT検査や抗生剤など強力な薬の投与をしたため、胎児の命はもって3日でしょう。胎児の心拍が停止したら、奥さんの生命維持装置も止めます」とムリエルさんに告げた。

ところがここで、医師も予期せぬ奇跡が起こった。生き延びることはできないだろうと思われていた双子は、脳死した母の胎内で成長し続けたのだ。神経内科学集中治療室の主任であるダルトン・リヴァベム医師はこのように語っている。

「超音波検査で胎児が生き続けていることを知り、驚きました。患者の臓器は全てそのままで生きているかのように動いていたので、我々は小さな命を救う決心をしたのです。」

それからは24時間体制でフランキーレンさんの心拍数、血流、血圧、酸素量などをモニタリングする日々が続いた。意識のない母親に代わって医師、看護師、栄養士、理学療法士などが交代でお腹の赤ちゃんに語りかけ、歌を歌って励まし続けた。フランキーレンさんのベッドは家族写真などが飾られ、双子のことを知ったブラジルの人々からはたくさんの寄付が寄せられた。ただこの病院では前例がなかったため、リヴァベム医師はポルトガルで脳死患者の体内で107日間胎児が育ったケースを取り扱ったことのある医師へ協力を求め、超音波検査をしながら胎児の状態を観察した。

幸運にも胎児はフランキーレンさんのお腹の中で順調に育ち、今年2月に妊娠7か月の状態で帝王切開によって無事誕生した。その後、フランキーレンさんの心臓と腎臓は臓器提供のために摘出され、人工呼吸器が外された。

妻を亡くすという悲しみを堪えながらも、元気に生まれた男女の双子は5月末に退院し、ムリエルさんが仕事をしている間はフランキーレンさんの母親であるアンジェラさんが世話をしているという。この先、子供たちが母親に会うことは叶わないが、母の強さを持って生まれてきたことは間違いないといえよう。

画像は『Metro 2017年7月11日付「Brain dead mother gives birth to twins after 123 days on life support」(Picture: Caters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)